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自律神経の乱れが更年期症状をひどくする その予防法は?

自律神経の乱れが更年期症状をひどくする その予防法は?
エイジングケア
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更年期の症状は、女性の場合は卵巣の萎縮と機能低下に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少で起こります。でも、誰もがほてりやのぼせなどのホットフラッシュや発汗、イライラなどの不快な症状に悩まされるわけではありません。症状が出る人と出ない人には、何か理由があるのでしょうか。

「よく生理痛がひどかった人が、更年期障害がひどくなりやすいかどうかのご質問を受けますが、更年期障害と関係ありません。肥満や運動不足など生活習慣の乱れで、更年期の症状が強く出やすいことはわかっています」

こう説明する国際医療福祉大学三田病院婦人科の上田和教授は、子宮がんなどの女性特有のがん治療の発展に貢献。その一方で、がん治療で卵巣を摘出すると、自然の閉経より更年期症状が強く出ることがあるため、女性医学についても造詣が深く、同科では女性ヘルスケアにも力を入れています。

「更年期障害には、ホルモン補充療法や漢方薬の治療法がありますが、生活習慣の見直しの指導も大切になります。自律神経(交感神経と副交感神経)が乱れやすい生活では、更年期障害の症状がひどくなりやすいのです」

自律神経が乱れると、急に汗をかいたり、めまいがしたり、眠れないなどの症状につながります。更年期障害に限らず、自律神経の乱れに伴う症状を経験された方はいるでしょう。更年期障害でも、自律神経が乱れることで症状が引き起こされるため、不規則な生活など自律神経が乱れやすいと、症状がひどくなりやすいのです。

「肥満や生活習慣病は、自律神経を乱します。運動不足もしかりです。1日3食適度に食べて、身体をなるべく動かすようにしましょう。生活リズムを整えることが、自律神経の乱れの予防・軽減につながります」

運動習慣は自律神経の働きを整いやすくします。反対に運動不足では、自律神経の働きが乱れやすいと考えられています。更年期の気分の落ち込みや、仕事や家事で多忙な生活では、つい運動習慣は後回しになりがち。ですが予防の観点からは、運動習慣は必要不可欠。また、肥満や生活習慣病の改善には、偏った食事内容の見直しも大切になります。

「大豆に含まれるイソフラボンは、体内でエクオールに変わることで女性ホルモンのような作用が期待できます。大豆製品やサプリメントも活用しつつ暴飲暴食は控えて、健康管理を心掛けてください」

軽症の人は、食生活の見直しやサプリの活用で、更年期を元気に乗り越えられるケースが少なくないそうです。「外出するのもツライ」といった重症の方は、婦人科を受診して医療の力を借りつつ、更年期障害に対処しましょう。

「軽症であっても、不正出血や体調不良が続く場合は一度、婦人科を受診してください。更年期世代は、子宮がんや卵巣がんのリスクもあるからです。更年期を健康管理の見直しのきっかけにしていただきたいと思います」

更年期は、女性に限らず男性も、「老い」を感じやすい時期。でも、夫婦で健康管理に力を入れることで、「老い」が引き起こす症状を抑制することは可能です。健康管理を心掛け元気を取り戻しましょう。

解説
産婦人科医師
上田 和
国際医療福祉大学医学部産婦人科学教授、国際医療福祉大学三田病院女性腫瘍センター・婦人科部長。1998年東京慈恵会医科大学卒。東京慈恵会医科大学産婦人科学講座講師、Asan Medical Center(Seoul)留学などを経て、2020年に国際医療福祉大学三田病院婦人科部長、2021年から現職。婦人科系がんの診断・治療・研究を数多く行う一方、更年期障害にも詳しい。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。