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更年期障害、治療の4つの選択肢を改めておさらい

更年期障害、治療の4つの選択肢を改めておさらい
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40代を超えると、だるい、気分の落ち込み、寝つけない、肩こりがひどい、頭痛やめまいに襲われるなど、さまざまな体調の変化が現れることがあります。加齢に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の低下、男性の場合は男性ホルモン(テストステロン)の低下が原因です。

症状は人それぞれですが、自覚症状があっても医療機関を受診しない人は、40代から50代の女性で約8割もいました。その理由として、「医療期間に行くほどのことではないと思うから」が約7割います(厚労省2022年『更年期症状・障害に関する意識調査』)。

「症状がつらくても、我慢されている方は少なくないと感じています。しかし、更年期障害には治療の選択肢がありますし、症状によっては別の病気が隠れていることもあります。我慢せずに、ご自宅近くの婦人科へご相談していただきたいと思います」

こう話す国際医療福祉大学三田病院婦人科の上田和教授は、がんなど婦人科系疾患に対する身体に負担の少ない治療法を推進する一方、女性のヘルスケア(女性医学)にも尽力しています。

「更年期障害のことは聞いたことがあっても、治療法がよくわからない方もいると思います。治療では食事や運動などの生活習慣の見直しやカウンセリング以外に、4つの治療法が柱になっています」

更年期障害の治療の柱は次のとおりです。

①ホルモン補充療法

子宮がある人には子宮体がんの予防目的で、女性ホルモンのエストロゲンと黄体ホルモンを併用します(子宮を摘出している人はエストロゲンのみ)。女性ホルモン剤は血栓症のリスクが低い貼り薬や塗り薬を活用します。ホットフラッシュといった自律神経系の症状に優れた効果を発揮し、骨粗鬆症予防や美肌効果なども期待できます。

ただし、使用期間により乳がんや子宮体がんの発症リスクが高くなることがあるため、定期的な検査は欠かせません。

②漢方療法

更年期症状を軽減する漢方薬を使用します。加味逍遙散(かみしょうようさん)はイライラや倦怠感などが強いときに処方され、むくみや冷えがあるときには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など、症状に合わせていろいろな漢方薬を選ぶことが可能です。ただし、効果が現れるまでに多少時間がかかることがあります。

③向精神薬

うつ症状など精神的な症状が強い場合に処方されます。

④プラセンタ療法

胎盤から抽出したタンパク質・脂質・糖質の3大栄養素、16種類のアミノ酸・ビタミン・酵素・アミノ酸などの栄養素を含み、さまざまな効果があります。即効性があり副作用が少なく、更年期障害の治療では保険適用されています。皮下注射で、最初は頻回、通院しなければなりません。

「更年期障害の疑いのある方には、ホルモン量を測る採血や骨密度検査などを行い、他科と連携しながら、別の病気が潜んでいないかも鑑別させていただいています。その上で、症状に合わせた適切な治療を提供していますので、ご相談ください」

更年期障害は、女性ホルモンの急激な減少に加え、食生活の乱れなどの要因でも症状が強くなりやすく、身体状態や生活環境でも治療法は変わってくるそうです。日常生活に影を落とす症状は、医療の力を借りることで、軽減可能なことを覚えておきましょう。

解説
産婦人科医師
上田 和
国際医療福祉大学医学部産婦人科学教授、国際医療福祉大学三田病院女性腫瘍センター・婦人科部長。1998年東京慈恵会医科大学卒。東京慈恵会医科大学産婦人科学講座講師、Asan Medical Center(Seoul)留学などを経て、2020年に国際医療福祉大学三田病院婦人科部長、2021年から現職。婦人科系がんの診断・治療・研究を数多く行う一方、更年期障害にも詳しい。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。