手軽に食べられるグラノーラの“最適化”ができる
腸内フローラの働きとして、腸内細菌にエサ(未消化物)が届くと、短鎖脂肪酸に代表される代謝物質が産生され、それらが腸管から吸収されて血中に移行して全身をめぐり、さまざまな健康効果が期待できる。健全な腸内細菌を育むには食物繊維やオリゴ糖などの摂取がいいが、日々忙しい人は、これらの食物をバランス良く摂るのが難しい場合がある。
そうした中、自分の腸内フローラを調べてそれに合ったグラノーラ(シリアルの一種)を選ぼうという商品が話題になっている。グラノーラなら手軽に食べられ、食物繊維も摂取できる。これにも、「腸内デザインにより腸内環境を改善して病気ゼロを目指す」研究者、福田真嗣氏がかかわっている。
カルビーと共同で研究
グラノーラを提供するカルビーに、福田氏が代表取締役社長CEOを務めるメタジェンと腸内フローラ検査を手がけるサイキンソーが連携した商品だ。その目指すところはどこにあるのか。
福田氏は「腸内環境に基づく層別化ヘルスケアだ」として、解説する。「腸内細菌の数は約40兆個に及び、その種類も約1000種類といわれています。しかも、個々人の腸内環境は長期的な食習慣や生活習慣の影響を受けて異なり、多様化しています。その違いに応じて科学的根拠に基づいてアプローチを行うのが狙いです」
採便して検査→最適なグラノーラを注文
その経緯は?
「弊社とカルビーのトップが、腸内環境に着目した層別化ヘルスケアの考え方に意気投合し、2021年春から共同研究を開始。サイキンソーの検査技術を導入し、3社が互いの強みを最大限に発揮したサービスが誕生しました」(メタジェン社)
腸内フローラ検査はウェブサイトから簡便に申し込める。注文するとキットが届き、採便して、それをポスト投函(とうかん)する。次に検査結果が届く。全57タイプに分類された腸内フローラタイプ、腸内に存在する腸内細菌の多様性や口腔常在菌の割合などが判明する。この検査結果を参考に客が自分の腸内細菌のエサになるプレバイオティクストッピングを選択し、グラノーラを注文するのが一連の流れだ。
12万人が検査
グラノーラを購入する前に検査が必要との商品は従来にはないチャレンジで、健康を重視する人には「自分に合う、こういう商品を待っていた」と好評だという。本サービスを含め、国内での腸内フローラ検査はすでに12万人を超えた。ただ、「自分の腸内フローラの情報を起点にヘルスケアを実践することが文化になるようにもっと浸透させていきたい」と福田氏は言う。
医療のトレンドが、ゲノムの解明などに伴い、個人ごとの治療を目指す個別化医療にシフトする中、食の世界でも腸内環境の研究の進化によって、層別化が進んでいるといえるだろう。