頭痛 デジタル・ヘルスケア最前線

デジタル・ヘルスケア最前線(2)~頭痛“予防”の強い味方!診察前に医師とデータ共有できる「電子頭痛ダイアリー」

デジタル・ヘルスケア最前線(2)~頭痛“予防”の強い味方!診察前に医師とデータ共有できる「電子頭痛ダイアリー」
予防・健康
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とっさに書けない紙、すぐにつけられるスマホ(電子)ダイアリー

頭痛の季節である。

「朝夕で気温が変わりやすい気候の変わり目、梅雨や台風など気圧が変動しやすいときに片頭痛発作の回数が増えるケースは多いです」

頭痛治療のスペシャリスト、富永病院(大阪市)脳神経内科副部長の菊井祥二医師が語る。

頭痛の多くは片頭痛と呼ばれるもので、「小・中学校の頃から始まり、20~40代でピークを迎えます」。男女比では女性が約3倍多いという。

片頭痛の治療をきちんと受けていない人も少なくない。「就労世代や子育て世代など忙しい方が多く、きちんと医療機関を受診する時間がとりにくい事情があります」

そうした忙しい人向けに効果が期待されるのがデジタル医療だ。菊井医師は電子ダイアリーを積極的に導入し、患者の頭痛の管理をしている。

大阪府に住む主婦、高木久子さん(50代、仮名)は、20代からの頭痛で市販薬に頼ることが多く、こんなに薬を飲んで大丈夫かと不安だった。

頭痛外来を受診し始めて、紙の頭痛ダイアリーに頭痛や服薬を記録していた。頭痛外来ではその記録を見ながら、診療、投薬の方針を決めるので、重要性は理解していた。だが、通勤途中や勤務中に頭痛が起こるとすぐに記録できない。後でしようと思っても忘れてしまうこともあった。

菊井医師は、スマートフォンで使える電子ダイアリーのアプリを紹介した。「頭痛が起きたらすぐに記録でき、入力が簡便なので助かっています」と高木さんは話す。

診察前にアプリからデータ送信、医師が状況把握

兵庫県の会社員、北村次郎さん(40代、仮名)も、20代からの頭痛持ち。激しい頭痛で欠勤を余儀なくされたり、入院したりすることもあった。日記は長続きしたことがなく、紙の頭痛ダイアリーを勧められても全く記載できなかった。

北村さんも、菊井医師に電子ダイアリーを紹介された。「スマホのアプリでの記録によって、自身の頭痛が起こりやすい時期や誘因など把握しやすくなりました。主治医のパソコンにもアプリの記録が反映されており、外来受診時だけでなく、常に自分の頭痛を診てもらっている安心感があります」と北村さん。

電子ダイアリーの管理とともに、新しい注射薬の効果もあり、欠勤はなくなったそうだ。

菊井医師は、YaDocという頭痛管理アプリを使用している。患者と医療者側双方にいくつかのメリットがある。

「患者さんが外来に来る前にも、アプリからデータが送られてくるので常に患者さんの状況を把握できます。前回受診時からの状況はある程度把握できて、医師、患者双方の診察時間を短縮できます。患者さんが電子ダイアリーに記録してくれると、医師が紙媒体のダイアリーから電子カルテに保管する手間が省けます。これは、医療者にはとても助かります」(菊井医師)

しかも、「外来時に2年前と今の頭痛日数を比較する場合などに、すぐにデータを出せる。また、3カ月間の頭痛日数が瞬時にパソコン上にでてくるので、新たに導入した薬剤の効果判定をすぐに患者と共有できる利点もあります」と菊井医師。アプリは国民病である頭痛の治療に、大きな助っ人となっている。
 

菊井祥二(きくい・しょうじ)


1994年、奈良県立医科大学卒。2012年、富永病院脳神経内科副部長、2018年、同病院パーキンソン病治療センターセンター長。日本頭痛学会幹事・専門医・指導医、国際頭痛学会Headache Masterなど。医学博士。

執筆者
医療ライター
佐々木 正志郎
医療ライター。大手新聞社で約30年間、取材活動に従事して2021年に独立。主な取材対象はがん、生活習慣病、メンタルヘルス、歯科。大学病院の医師から、かかりつけ医まで幅広い取材網を構築し、読者の病気を救う最新情報を発信している。医療系大学院修士課程修了。