1日20分の日光浴で生成されるが…
がんの死亡率を下げ、感染症やアレルギー予防に役立つ可能性があるビタミンDは、ビタミンCなど他のビタミンと異なり、人間の体内でも作られている。
「1日20分日光浴をすれば、皮膚でビタミンDは生成されます。しかし、生活環境や加齢によって、ビタミンDの体内での生成や恩恵を受けにくくなっていると考えられるのです」
こう指摘するのは、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島充佳教授。ビタミンDサプリメントとがん死亡率の低減、再発予防などの研究を行っている。
「たとえば、若い人はビタミンDの助けがあまりなくても免疫細胞が正常に働いていると考えられます。高齢になるにつれ、ビタミンDの助けが必要になるのではないかと思うのです。古い自転車には、こまめに油をさしてメンテナンスが必要なイメージです」
浦島教授らの研究では、ビタミンDサプリメントのがん死亡率低減が、年齢が高いほどその傾向が強くなっていた。高齢になるにつれ足りなくなったビタミンDが、サプリメントで補われ威力を発揮した可能性がある。一方、梅雨時や冬場など日照時間が少ない季節は、体内でのビタミンDの生成量も下がりやすい。
食品だけでは難しい、サプリで補おう
「夏と冬でも、体内のビタミンDの生成量は異なります。また、自宅から最寄り駅が近いなどオフィスまで“ドアtoドア”でほとんど屋外に出ない人もいるでしょう。食品だけで補うのは難しいと思います」
ビタミンDを食事だけで摂ろうとキノコ類などを多量に食べるのは無理がある。毎食ごとに多量に食べれば、偏った食事内容になりかねない。日光浴も、食事も、それだけでビタミンDを補うには不十分。不足分を補うのがサプリメントだ。
「1日1000~2000IU(25~50マイクログラム)が健康に寄与すると考えられます。ただし、活性型ビタミンDという医薬品の服用は、医師の指示に従ってください」
活性型ビタミンDの医薬品は骨粗しょう症と診断された人に対し、処方されることが多い。カルシムの吸収をよくして骨を丈夫にするために活用されている。慢性腎不全などで血中のカルシウム濃度が低いときにも、処方されることがある。
「活性型ビタミンDは、ビタミンDが腎臓で変換された後にでき、副甲状腺ホルモンで血中濃度が一定に保たれています。むやみに服用するのはよくありません。健康な人は、日光浴、食品とサプリメントでビタミンDを補いましょう」
ビタミンDを意識することはシニアにとって大切だ。がんや感染症、アレルギー、骨粗しょう症に伴う転倒骨折など、加齢に伴い生じやすい身体の異変を丸ごと退けることが期待できる。
浦島教授お勧め ビタミンDの補い方
- 1日20分程度の日光浴を意識して屋外を歩く
- 顔などの日焼けを避けたいときには、手のひらを太陽に向ける
- キノコ類を食べる(キノコ類は、天日干しするとビタミンD含有量が上がる)
- サケやイワシなどの魚類もビタミンDを多く含む。1日3食のうち1食は、魚料理を食べる
- 日光浴や食事の改善が難しいときには、ビタミンDのサプリメントを活用する