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がん死亡率を下げる!ビタミンDの底力(2)~3~4年後のがん再発も防ぐ可能性

がん死亡率を下げる!ビタミンDの底力(2)~3~4年後のがん再発も防ぐ可能性
病気・治療
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ゆっくり再発するがんに、ビタミンDは効果が高い可能性

国内では、男性が4人に1人、女性は6人に1人が、生涯を通してがんで亡くなると推計されている。有効ながん検診や新薬の登場をもってしても、がんは強敵であることに変わりはない。がん治療を受けてホッとしたのもつかの間、「再発・転移」を告げられて奈落の底に落とされるような思いをする患者もいる。しかし、「再発・転移」の一部も、ビタミンDが封じ込める可能性が見えてきた。

「私たちの研究では、ビタミンDのサプリメントをとってから1年以降、ビタミンDをとっていた群は、そうでない群と比べて再発・死亡率が有意に低減していました。ゆっくり再発するがんに、ビタミンDは効果が高いのではないかと考えています」

こう話す東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島充佳教授は、がんとビタミンDについて長年研究を行っている。今年3月には、ビタミンDサプリメントをとっている群は、そうでない群と比べてがんの死亡率が12%減少することを10万人規模の国際研究で明らかにした。

「私自身、小児科医としてがん患者さんを数多く診ていますが、1年半以内に再発するがんは比較的質が悪く、3~4年後に再発するがんは治りやすい印象を持っています。後者に、ビタミンDのサプリメントは効果があるのではないかと思っています」

再発防ぐのか? 科学的検証進む

ここで少しがん再発のおさらいをしよう。がんが臓器やその周辺のリンパ節にとどまっている場合は、手術で臓器やリンパ節を取り、必要に応じて放射線や薬による治療を行うことで、目に見えないがんを封じ込め、再発防止を行うのが一般的な治療である。

手術でがんを含む臓器を取り除いても、内視鏡検査やCTなどの画像検査に映らない小さながんが、残っている可能性があるからだ。放射線治療や薬物療法で小さながんが駆逐できれば再発は防げる。しかし、がん細胞は遺伝子を変異させやすい性質を持ち、治療をすり抜けると再発してしまう。

「私たちが2010年に行った『アマテラス試験』では、ビタミンDのサプリメント内服開始から1年以降を解析すると、ビタミンD群の5年生存率は85.8%。プラセボ群は76.4%でした。1年以降の死亡率や再発をビタミンDが防いでいる可能性があります」

それを検証すべく浦島教授らは、2022年に「アマテラス2試験」の研究をスタートした。ビタミンDが遅発性のがんの再発や死亡を抑制するか否か、科学的な検証を進めている。同時に、ビタミンDの長期服用(1日2000IU)の安全性についても検証しているという。

「ビタミンDの効果を科学的に解明することで、治療や予防での活用につなげたいと思っています」と浦島教授は意欲を見せた。

アマテラス試験とは

東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島充佳教授らが2010~2018年に行った試験。417人のがん患者を、ビタミンDサプリメント(1日2000IU)を内服する群と、ビタミンDが入っていないプラセボ群に分け、どちらの群で再発・死亡が多いかを観察。ビタミンD群は77%が再発なく存命。プラセボ群は69%だった。2019年、米国医師会誌に論文が掲載された。

解説
小児科医、医学博士
浦島 充佳
東京慈恵会医科大学分子疫学研究部教授、医学博士。1986年、東京慈恵会医科大学卒。2000年、ハーバード大学スクール・オブ・パブリック・ヘルス(HSPH)卒。小児科診療の一方で、臨床研究を数多く行い成果を上げている。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。