関節痛 運動・スポーツ 痛い!関節の悩み解決術

痛い!関節の悩み解決術(5)~関節を守るための「正しい運動」公開!

痛い!関節の悩み解決術(5)~関節を守るための「正しい運動」公開!
病気・治療
文字サイズ

関節を守る方法

変形性膝関節症や変形性股関節症に悩む人は多い。単純に両方の推計患者数を足せば、国内では4人に1人が関節の不具合を抱えていることになり、もはや“国民病”ともいえる。予防法はないのだろうか。

「関節のクッションの役割りの軟骨がすり減り、骨が変形しても、必ずしも痛みが生じるわけではありません。日常生活に支障なく過ごしている方もいます。しかし、症状が出た状態を放置していると、関節の変形がどんどん進む可能性があるのです」

こう話すのはNTT東日本関東病院人工関節センター長(整形外科医長兼務)の大嶋浩文医師。股関節の病気の診断・治療を得意とし、関節疾患に苦しむ患者を数多く救っている。

「関節を守るには(1)関節に負荷をかけ過ぎない(2)関節を支える筋力の強化—を意識することが大切です。ただし、ウオーキングやストレッチは、その方法によっては逆効果になることがあるので注意しましょう」

有酸素運動のウオーキングは、生活習慣病予防としては、一般的にお勧めの運動法だ。会社帰りにちょっと遠回りをしてウオーキングをしながら帰宅する人もいるだろう。だが、固いコンクリートの上を革靴で歩くと膝関節や股関節への圧力は高くなる。体重60キロの人が8000歩歩くと、180~300キロの圧力が8000回も関節にかかるイメージだ。体重が増えた人や、もともと肥満気味の人は、その分、関節への圧力が高まるため、「いきなりウオーキングで関節を痛めた」といった事態に見舞われかねない。

水中歩行がオススメ

「女性のヒールの靴は、関節にとってはさらによくありません。歩くときには、靴底にクッションがしっかりついているウオーキングシューズを履くようにしましょう。できれば、コンクリートでなく土や芝生の方が、関節への圧力は軽減しやすいと思います」

加えて、スクワットも、膝の角度が90度になるまでグッと下げると、膝関節や股関節の圧力は高まり危険だ。手にバーベルを持ってスクワットをすれば、さらに関節への圧力は強まる。それでも無理に続けていると、関節の骨の変形を後押ししてしまうので注意が必要だ。スクワットは、膝を曲げ過ぎず、浅く腰を下ろすイメージで行うとよいそうだ。

「関節を守る運動としてお勧めなのは、水中歩行です。浮力で関節に対する体重の圧力は軽減され、水の抵抗で太ももなどの筋力を効率よく鍛えることもできます。水中が難しい場合は、筋肉を鍛える体操もよいでしょう」

すでに膝痛や股関節痛を抱えている人には、水中歩行が特にお勧めだという。肥満気味の人も、水中歩行ならば自分の体重の圧力で関節を痛めるリスクは軽減できる。ただし、自己判断は禁物。

「症状がある方は、まずは整形外科を受診してご自身の関節の状態を把握しましょう。状態に合わせた適切な運動が、関節を守るために欠かせません。正しい知識を持って取り組みましょう」と大嶋センター長はアドバイスする。

イラストは日本整形外科学会「変形性ひざ関節症の運動療法」から引用

太ももの外側の筋肉を鍛える

  1. 身体を真っすぐにした状態で、左側を下にして横向きに寝る
  2. 右脚を真っすぐな状態にしたまま、股をゆっくり開き、右脚を上げる(左脚との開く間隔は20センチ程度)
  3. 右脚を上げた状態で5秒程度キープ(このとき息は止めない)
  4. ゆっくり右脚を下ろし左脚につける
  5. 右側を下にして横向きに寝て、左脚で(2)~(4)を繰り返す

※10~15回を目安に、徐々に回数を増やしていこう

解説
整形外科医
大嶋 浩文
NTT東日本関東病院人工関節センター長、整形外科医長。2004年、弘前大学医学部卒。JR東京総合病院や東京大学医学部附属病院などを経て現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、ロボティックアーム支援人工股関節置換術指導者など多数の資格を有する。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。