日本人の2人に1人はがんになっていることは知っていても、「がん検診」に二の足を踏む人はまだまだ多い。「定期健康診断で大丈夫だから」と過信しているうちに、がんは自覚症状がないまま進行する。油断は大敵だ。
「無暗にがんを怖がる必要はありませんが、がんの発症リスクが高い方は、がんの有無を定期的にチェックし、早期発見・早期治療につなげていただきたいと思います」
こう話すがん研究会有明病院健診センターの藤崎順子センター長は、クオリティーの高い検査技術を導入し、『がん専門ドックコース』などでがんの発見率向上に尽力している。同時に、がん専門の人間ドックの重要性についての啓蒙活動にも力を注ぐ。
「たとえば、お酒を飲んで顔が赤くなる方が、毎晩のようにお酒を飲んでいた、あるいは、今も飲んでいるなら、食道がんのリスクが高くなります。そのような方は、上部内視鏡検査を受けることが重要です」
アルコールが体内で代謝されるときには、アセトアルデヒドという物質が生じる。人体に悪影響を及ぼすため、アルデヒド脱水素酵素によって無毒化する仕組みがある。が、その働きが弱いと、顔が赤くなり、動悸が速くなるなどの症状が現れるのだ。アセトアルデヒドは発がん性も疑われる物質で、無毒化されないまま体内に残ると、二日酔だけでは済まず、食道がんのリスクを上げることになる。
「自治体のがん検診の内視鏡検査は、主に胃がんを調べるために行われています。食道がんを早期段階で見つけるには、食道もしっかり観察できる特殊な内視鏡検査がお勧めです。がん専門ドックでは、食道がんの早期発見にも力を入れています」
飲酒は、食道がんのみならず、肝がんや大腸がんとの関係も報告され、女性では乳がんリスクも高くなる。いずれにせよ飲み過ぎはよくない。1日平均のアルコール摂取量が、純エタノール換算23グラム未満で、がんリスクが下がるという。また、酒の肴の塩蔵品など、塩分が多い食事は胃がんのリスクを上げる。
「減塩は、高血圧の人の食生活の見直しで取り上げられることが多いのですが、がん予防にもなるのです。生活習慣の見直しは、生活習慣病と心筋梗塞や脳卒中のリスク低減に役立つ一方、がんのリスク低減にもつながることを知っていたいだきたいと思います」
食生活の乱れ、運動不足、肥満などは、メタボリックシンドロームのリスクのみならず、大腸がんなどがんリスクを後押しする。
「生活習慣を見直すと同時に、がん検診を含めた人間ドックでがんの有無もチェックしましょう。生活習慣病だけでなく、がんも早く見つけて治す時代です。その心掛けを持っていただきたいと思います」と藤崎センター長はアドバイスする。
飲酒量の目安(1日あたり純エタノール量換算で23g程度)
- 日本酒:1合
- ビール大瓶(633ml):1本
- 焼酎・泡盛:原液で1合の2/3
- ウイスキー、ブランデー:ダブル1杯
- ワイン:グラス2杯程度
※『科学的根拠に根ざした予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」』(国立がん研究センター)から