日本人の2人に1人はがんになり、がんになった人の3人に1人は亡くなっている。医学は進歩し、身体に負担の少ない治療法や、新たな薬剤が開発されているにも関わらず、がんを撲滅することは難しい。だが、がん検診を上手く活用し、早期発見できれば治るがんもある。そのひとつが大腸がんだ。
「日本では自治体のがん検診では便潜血検査が推奨され実施されています。米国では、大腸内視鏡検査の受診率が約80%、日本では約30%にしか過ぎません。大腸内視鏡検査を避ける傾向があるため、早期発見・早期治療につながらないことがあると考えています」
こう話すがん研究会有明病院健診センターの藤崎順子センター長は、胃がんや食道がんの内視鏡的治療や早期発見の進展に尽力。現在、健診センター長を兼務し、がんの早期発見・早期治療へのサポートも行っている。
「便潜血検査だけでは、必ずしも大腸がんを発見できるとは限りません。また、便潜血検査で『陽性』の結果を得ても、大腸内視鏡検査を受けない方が依然としているのです。大腸がんを早期発見するチャンスを逃さないでいただきたいと思います」
自治体などで年1回行われる大腸検診は、40歳以上に対する「便潜血検査」が基本だ。便の一部を1~2回採取し、そこに血が混じっていないかを調べる。血が混じり「陽性」と判定された受診者には、改めて大腸内視鏡検査を受けるように促す仕組み。しかし、男女ともに大腸がん検診を受けている人は50%に届いていない(厚労省2019年「国民生活基礎調査」)。せっかく便潜血検査を受けても、「陽性」となったときに大腸内視鏡検査を受ける人は約6割にとどまるそうだ。
「陽性を放置して大腸がんが進行し、腸閉塞の激痛で緊急搬送されるケースは珍しいことではありません。(便潜血検査で陽性となっても)痔や月経などの血が混じったと考える方もいるようです。大腸内視鏡検査はぜひ受けていただきたいと思います」
胃や食道の上部内視鏡検査は、絶食して胃の中を空っぽにして受ける。一方、大腸内視鏡検査の場合は、大腸の中をキレイにするのに下剤を飲む必要があるため、手間隙がかかると思う人もいるようだ。一度受けた人から「大変だった」といった話を聞いて、ちゅうちょしてしまう人もいるだろう。さらに、お尻を出すことを恥ずかしがる人もいるようだが、実際の大腸内視鏡検査は、心配するほどハードルは高くなくなっている。
「下剤などいろいろ工夫されていますし、検査前の時間はずいぶん短縮されています。便潜血陽性の方はもちろんのこと、親に大腸がんの人がいるなど家族歴のある方、便秘など大腸の不調を抱えている方は、人間ドックで大腸内視鏡検査を選択していただきたいと思います」と藤崎センター長はアドバイスする。
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※厚労省2021年「人口動態統計」から