日本人は2人に1人が「がん」になるといわれる。がんの種類にもよるが、全体的な5年生存率は69%。乳がんのように90%を超えるがんもある。つまり、医学の発展でがんを克服できる人が増えているのだ。(2020年11月集計の全国がんセンター協議会の生存率共同調査による)
とはいえ、油断ならないのが、がんだ。男女ともがん死因第1位の「肺がん」は、進行度合いが早期の第Ⅰ期の5年生存率は86%だが、かなり進行したⅣ期には、7.8%まで下がってしまう。
「がんは症状が出たときには、程度の差はあれ、進行していることが多い。いかに無症状の早期段階で発見するか。そのためにがん検診や人間ドックを活用していただきたいのです」と、がん研究会有明病院健診センターの藤崎順子センター長は話す。
大事に至る前に早期発見・早期治療がなによりであることを知っていても、がん検診への足が遠のいている人もいる。働き盛りの世代では、仕事、育児、家事に忙殺されて時間が捻出できないという声もある。体調が悪いと時間を惜しまず病院へ行く人も、健康だと、ついがん検診の時間を作れないという本音が聞かれる。先延ばしにしている間に1年が過ぎ、「昨年も、一昨年もがん検診を受けなかった」となるケースもある。
「進行がんになると治療に時間がかかります。早期段階で見つけることができれば、時間は比較的かからずに済みます。定期健康診断では見つけられないがんも、がん検診を含めた人間ドックなら、見つけることが可能です」
たとえば、定期健診で当たり前のように行われる胸部X線検査は、肺炎や肺気腫などの肺の病気のみならず、心肥大などの心臓の異常や、胸部大動脈瘤など血管の異常も映し出す。そして、肺がんも見つけることができるといえば、できるのだが、ある程度大きくならないとわかりづらいという。
「小さな肺がんが心臓の後ろに隠れるなど、早期がんを見つけにくいのです。『肺ヘリカルCT』であれば、5ミリの肺がんでも映し出すことができます」
肺ヘリカルCTは、肺を輪切りにした画像で小さながんの発見に役立つ。がん研有明病院では、放射線被ばく量の少ないCT装置を備え、確実な検査技術と身体への負担軽減を両立しているという。
「定期健康診断を受けて、がんが見つからないから安心とは思わないでいただきたいのです。健康を過信しないようにしましょう」
こうした肺ヘリカルCTなどの最新機器を用いた人間ドックでは、自己負担の費用がかかる。時間もなければお金も節約したいという人にとっては、受診のハードルは高く思えるかもしれない。さらに、がんが発見されるのでは―という恐怖心も、がん検診への足かせとなりがちだ。
「がんは早期発見で治ることが多い。がん検診を含めた人間ドックの1回の受診料は高くても、年に1回を日割りに換算してみると、1日コーヒー1杯分程度になる場合もあります。その額を健康への投資とすることで、進行がんリスクの低減に役立ててはいかがでしょうか」
発想を変えてみよう。
がん検診「未受診」の理由
1位 受ける時間がない
2位 健康状態に自信があり、必要性を感じない
3位 心配なときはいつでも医療機関を受診できる
4位 費用がかかり経済的にも負担になる
5位 がんであるとわかるのが怖い
※内閣府大臣官房政府広報室「がん対策に関する世論調査」から