初夏の食薬習慣(1)~持久力がないときは「補腎」 卵、鶏肉、サケの朝の摂取が効率的
薬剤師、国際中医師 大久保愛

みなさん、お元気ですか。GWで長期休暇をゲットした人は、生活リズムを崩し、体調不良を抱えているかもしれません。ですが、5月というのは、1年のうちでも、まれにみる恵まれた気候特性をもった時期です。春の気候の変化が落ち着き、ぽかぽか陽気でエアコンが不要な日が多く、快適な月だと思います。
これが、6月になると太陽の位置が一番高くなって、夏の始まりを告げる夏至が訪れます。太陽との間に梅雨前線がやってきては、高温多湿の環境をもたらし、低気圧など自律神経を乱して、肉体的にもメンタル的にもつらい思いをすることになります。
また、ここ数年、灼熱の暑さが9月末まで続くのが恒例になってしまいました。
ということで、5月は蓄積した疲労や不調をリセットし、夏越えの準備をしながら、初夏を楽しむことが大切です。体調をセルフチェックしながら、食薬で心と体を整える食薬習慣をお伝えしていきます。今回は、持久力がなくなってきたと感じる人のための対策についてお伝えします。
突然ですが…
突然ですが、椅子に座った状態から立ち上がってみてください。
手を膝や机、椅子に手を添えて、上半身を前に倒し、ヨイショと立ち上がった人は要注意です。
立ち上がるためには、体幹を養う腸腰筋(ちょうようきん)や大きな筋肉である太ももや、お尻の筋肉を使っています。これらの筋肉が弱っていると漢方医学で考える「腎虚」という体質に分類されます。疲れやすい、持久力がない、腰痛が起こりやすい、夜中トイレで起きるなどの不調を感じやすくなると考えます。
「腎」が元気であることは、若々しさの必要条件とされています。立ち上がるときに手をついて前かがみになった人は、率先して階段を利用しましょう。電車で座らないようにしたり、大股で歩き1日の歩数を増やすようにしたり、とスキマ時間の筋トレも意識して「腎」を養っていきましょう。
漢方薬では、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)や六味地黄丸(ロクミジオウガン)などをつかうことがあります。
持久力がないときの食薬習慣
筋肉の合成を促すこと、そして、骨を強化することで「補腎」をしていきます。その結果として、持久力と若々しさを養います。
まずは、体重1キロあたり1.2~1.5グラム程度のタンパク質の摂取を目標としましょう。そして、筋肉の合成に関わるmTOR(エムトア)を活性化するアミノ酸の1種ロイシンを含み、速筋の増量に役立つビタミンDを生かした食材がおすすめです。
卵や鶏肉、サケなどがこれにあたり、時間栄養学的には朝の摂取が効率的とされています。
また、骨を強化するためには、カルシウムだけではなく、マグネシウム、亜鉛、ビタミンK、タンパク質、カロテノイド、ビタミンB6やB12、葉酸も必要です。これらは、夕方の摂取が効率的とされています。
丸ごと食べられる魚、貝類、海藻などを取り入れるようにしましょう。運動と食薬と合わせることで、疲れない体を取り戻しましょう。