ダイエットによって運命を変えたアラフォー女性が熊本にいる。フィットネスジムやエステに行かず、5人の子供(4男1女)を育てながら20キロもの減量に成功。試行錯誤の結果をインスタグラムで公開したところ大きな反響を呼び、一躍インフルエンサーとなった。それが“ダイエット母さん”と名乗る彼女だ。
「一番多いときの体重は68キロでした。5人目の産後7カ月からダイエットを始めて、1年間で20キロ減っていました」
27歳から妊娠・出産を繰り返していくうちに増えていった体重。ダイエットに至ったきっかけは、銀行のATMに表示された「画面の上に物を置かないでください」というエラーメッセージだった。
「何も置いてないわ、と思ったら、自分のおなかの脂肪だったんです。それまで自分のことをポッチャリ体形としか思っていなかったんですが、機械に『太っているぞ』と言われているようで、さすがにこれは痩せなければと…」
ジムに通わなかった理由
決意は固まったものの、すぐに挫折するかもしれないと不安になった。そこで、後には引けない状況をつくるため、インスタグラムで記録を公開していくと決めた。
「最初はプレッシャーもありましたが、続けるうちに『一緒に頑張ろう』みたいな仲間もできて、サークルみたいな楽しさがありました」
見直したのは生活習慣だ。スーパーマーケットでの買い物の内容を変え、食材を家族と自分用で買い分けた。忙しいときについ手を伸ばしがちなカップ麺やお菓子などを遠ざけるためだ。
「必要な分だけ買い物をして、自分の身の回りに健康に良いとされている食材だけ置こうと。ヘルシーな環境づくりから始めました」
もう1つは運動。おなかをへこませたり膨らませたりするドローインやスクワットなど、自宅でできる体幹トレーニングを続けた。ジムに通わなかったのは時間の余裕がなかったこと以外にも、こんな理由があった。
ダイエット本5万部突破
「周りの人から『太っているのに走っているんだな』みたいに思われるのが嫌だったんです」と苦笑い。
「誰にも見られたくなくて、外ではなく家の中だけで運動していました」
とはいえ、脂肪を減らして体重を20キロも落とすのは、簡単にできることではない。一体どんなコツがあるのか。
「モチベーションを捨てることですね。モチベーションに頼るのではなく、習慣化させることが大切なんです。毎日の食事や歯磨きなどと一緒。時間や、やる気がなくてもできるくらい、ゆるく長く続けることです」
ポッチャリ体形は子供のころからだったという。4姉妹の四女で、姉は3人とも自分より太っていたとか。「肥満の家系なのだ」と思いつつ、大きなコンプレックスになっていた。
「挨拶もできないほど内気な性格でした。目立ちたいという思いは心の中にありつつも、かわいい友達の方が目立つし、私にはできないとあきらめてばかりでした」
自然と「自分には何の取りえもない。意思も弱い」と考えるようになっていた。美容師の専門学校を卒業して企業勤めをしても、自信のなさは変わらなかった。
「誰かのために生きることはできても、自分を好きになるということが分からなかったんです」
そんな彼女に自己肯定感をもたらしてくれたのが、ダイエットだった。
「ダイエットを続けるために、自分自身と向き合う必要があったからでしょう。卑屈になって考えることがなくなりました。自分と対話しながら取り組んでいくうちに、子供たちの言葉にもよく耳を傾けるようになりました」
指南本として上梓した初の著書『ダイエット母さん、20kgの脂肪をちぎり捨ててみた。マネするだけ5日間痩せプログラム』(KADOKAWA)は、無名の新人ながら昨年9月の発売から半年をたたずに5万部を突破する大ヒットだ。「この本が少しでもお役に立てているのなら、うれしいです」とほほ笑む。
「まずは子供に目を向けるのと同じくらい、自分に目を向けてみてください。それだけでも変わってくると思います」
今も体重リバウンドと格闘中だが、「健康的なダイエットなので、これからも続けていけます」と、その表情は晴れ晴れとしていた。
(ペン・磯西賢/カメラ・関勝行)