コラム 高齢者にも激増 危険なスマホ依存症

高齢者にも激増 危険なスマホ依存症(4)~スマホ+SNSは「繊細さん」を助長、うつ病や適応障害も

高齢者にも激増 危険なスマホ依存症(4)~スマホ+SNSは「繊細さん」を助長、うつ病や適応障害も
コラム・体験記
文字サイズ

スマホ依存症が増えている中で、よく耳にするのが「HSP」です。スマホ依存症からうつ病になってしまったりする人がいるとして、その関係が注目されています。

HSPとは、「Highly Sensitive Person」(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、日本では「繊細さん」などと言い換えられています。要するに、人一倍繊細で感じやすい気質の持ち主で、米心理学者、エレイン・N・アーロンが提唱した心理学的概念です。なんと5人に1人がHSPだと言うのです。

彼女の本がベストセラーとなり、精神科医は早速、このHSPの診断を始めました。「私もHSPです」と言い出す人が増えたからです。いまでは、「HSP外来」まであり、医者は本当に商魂たくましいと思います。

なぜなら、HSPは持って生まれた「気質」で、「精神疾患」ではないとされるからです。HSPの人は、一般の生活の中で「生きづらい」「辛い」「疲れた」と感じやすく、それを訴えます。中には、本当にうつ病に移行してしまう場合もあることから、精神科医のカウンセリングの対象となったのです。

ただ、精神疾患ではないので有効な治療法はありません。言えるのは、HSPの人はうつ病、適応障害になりやすいということだけです。

この「HSP」をスマホ依存症の文脈で捉えると、スマホをやり過ぎて情報過多になり、落ち込んでしまい、うつ状態になるということになります。HSPの人は、取り残されたくないので、ともかく徹底して情報を見ます。フェイスブックなら同好グループ、フォロワーの投稿を常にチェックします。インスタグラムやツイッターも同じです。「見なきゃいけない」「取り残される」という心理が強いのです。

そして、自分の投稿に関しては、「いいね」「フォロワー」「リツート」といった反応や反響をとことん気にします。さらに、ブロック(遮断)されたりすると、「どうしてだろう」とずっと気を揉みます。また、リプライ(自分の書き込みへの他人からのコメント)に対する返答に何時間も悩みます。

こんなことをしていたら、脳が疲れ、機能停止に陥るだけです。情報を入れすぎて許容量を超えた場合、処理不能になります。また、身体的にも不調をきたします。眼精疲労、肩こり、頭痛などが起こります。HSPを訴えるのは、若い世代が中心ですが、最近は、高齢者も増えてきました。

HSPでスマホ依存症に陥り、そこからの脱却に成功した患者さんがしていた主な対処法は、次の3点です。

①デジタルデトックスを行う。定期的にスマホに触れない時間をつくる。これが最善の方法です。そのためには、高齢者はたとえばウオーキングに出ることです。このときスマホは持って出てはいけません。

②利用時間を決める。時間を決めて利用すれば、依存症は消えていきます。これには強い意志が要ります。意志が弱いなら、趣味や運動をする時間をつくり、スマホ時間を減らすことです。

③SNSの断捨離を行う。情報過多になるのは使用アプリが多いからです。どのSNSが必要か不要かを見極め、不要なものは棄てていきます。

この3点より、もっと効果的な方法があります。それは自然回帰です。都会のデジタルライフを逃れ、自然の中で暮らすことです。自然の中で暮らすことが、究極のデジタルデトックスです。

解説・執筆者
明陵クリニック院長
吉竹 弘行
1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。