人気ユーチューバーでもある注目の眼科医が、緑内障治療の新常識を1冊の本にまとめた。「緑内障は失明する病気」という古い常識を覆す、最新の論考を紹介しよう。
メディアでもたびたび登場する二本松眼科病院(東京都江戸川区)副院長の平松類医師=写真。数多くの著書で眼科領域の疾患の治療法や予防法を分かりやすく解説する一方、ユーチューブチャンネル「眼科医平松類」での解説が人気で登録者数は10万人を突破している。その平松医師の最新刊が『自分でできる! 人生が変わる 緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版刊、1870円)。
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フォロワーからの質問や反響の大きかった85の話題を、最新の研究をベースにQ&A方式でやさしく解説する1冊だ。
「緑内障は失明の恐怖のある病気。しかし、世の中にはエビデンスのない怪しい改善法がはびこっているのも事実。そこで医学的に正しい、それでいて自分でできる対策を発信したいと考えて」と執筆意図を語る。
たとえば「緑内障は失明しますか?」との質問に、著者はこう答える。
「しっかりと治療していれば、失明することはありません」
じつに頼もしい回答だが、その根拠はこうだ。2015年に発表された研究論文で、「20年間で両目を失明する人の確率は1.4%」と報告されている。つまり、1995年に治療を始めた人でさえ、緑内障で失明するのは1%台に過ぎないということ。
ならば「緑内障は治るのか?」という問いには「現在は難しいが、将来的には治るだろう」と答える。つまり、現状は緑内障は治せる病気ではないが、病状の悪化を食い止めることは可能。治療を受けずに放置すればいずれ視力を失うことになるが、正しい治療を受けさえすれば、もはや緑内障は失明を恐れる病気ではない―ということなのだ。
では、正しい治療とはどのようなものか。緑内障治療の柱は点眼薬、つまり「目薬」の投与だ。意外に簡単に思えるかもしれないが、著者は「95%以上の人が目薬の差し方を間違えている」と指摘する。
正しい差し方を別項に掲げたが、これは緑内障治療の点眼薬に限ったことではない。普段使いの市販の目薬にも共通することで、これを誤ると効果が半減するばかりか感染症を引き起こすリスクにもなる。ぜひ覚えておいてほしい。
「緑内障は、知らないで放置していると失明寸前になってしまうこともあるし、医者に通っていたのにどうして…というケースもあります。一方で自分でやれることもたくさんある。本書ではそうしたことを紹介しているので、一つでも役立つものを役立ててほしい。正しい情報を持つことで、後悔することなく一生見える目を持ってほしいのです」
目の衰えは全身の衰えを加速させる。積極的な機能維持に向けて、目を通しておきたい1冊だ。
正しい目薬の差し方
①手を洗う
②利き手でないほうの手でキャップをあけ、キャップはそのまま持っている(テーブルなどに置くとウイルス感染の原因になる)
③下まぶたを人さし指で引きながら目をあけて目薬を1滴差す(この時容器の先がまつ毛や眼球に触れないように注意)
④上手に差せない人は、片手に「げんこつ」を作り、その上に目薬を差すほうの手を置いて差す(「らくらく点眼」などの道具を使ってもいい)
⑤目薬は1滴で効果が出るように作られているので、複数滴差しても意味がない
⑥差した後は目をぱちぱちさせずに、静かに目を閉じて1分ほど目頭を押さえる
⑦複数の目薬を差す場合は、「粘性」の高い目薬をあとにする