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【ベストセラー健康本】認知症の人には世界がどう見えるのか『マンガでわかる「認知症の人には、こんなふうに見えています』

【ベストセラー健康本】認知症の人には世界がどう見えるのか『マンガでわかる「認知症の人には、こんなふうに見えています』
予防・健康
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2025年に高齢者の約5人に1人がかかると予測される認知症。誰しも加齢とともに、「できないこと」が増えていく。にもかかわらず、「温厚な人だったのに怒りっぽくなった」「新しいことに興味を示さなくなった」といった身近な人の変化にはショックを受けがちだ。では、認知症患者には世界がどう見えるのか。それを知れば、接し方やケアがわかるのではないか。そんな視点から生まれたのが、『マンガでわかる「認知症の人には、こんなふうに見えています」』(宝島社刊、1100円)である。

脳内科医の加藤俊徳医師=写真=が1万人以上のMRI画像による症例をもとに、「軽度・初期」「中程度」「やや重度」「重度」の段階別で日常生活の困りごとをマンガ化した。どれもがリアルでわかりやすい。

一例を紹介しよう。

■軽度・初期症状①「時間に厳しかったのに『すっぽかし』が増えた」

【見えている世界】約束を忘れ、カレンダーにメモすることを忘れていたことに気づくのは、「ただの物忘れ」。一方、「軽度認知障害」の場合、町内会の予定を忘れており、カレンダーを見ると記入されているが、「この集まりっていつ決まった? 俺はカレンダーに書いたのか?」と、自分の行動自体が思い出せない。

【家族の接し方】同じことを繰り返し言ったり聞いたりするのは不安の表れ。「さっきも言ったでしょう!」と厳しく言うと、不安をあおってしまう。「私が代わりに覚えておくから」と寄り添ってあげることが重要。

■軽度・初期症状②「几帳面な母が、冷蔵庫にマヨネーズ2つ」

【見えている世界】軽度認知障害になると、収納ケースや冷蔵庫の中など、「見えていないものを思い浮かべられなくなる」。重複買いや賞味期限切れが増え、食器をどこにしまえば良いかわからなくなる。

【家族の接し方】進行すると、公共料金の引き落としミスや通帳の再発行などにつながる場合も。「できないこと」をとがめず、家族全体でカバーすることが重要。

本書を監修した加藤医師は言う。

「85歳の私の母も読みやすいと手に取ってくれました。明日はわが身かもしれない病気、それが認知症です。年を重ねれば重ねるほどリスクが上昇します。もし家族が認知症と診断されても、認知症の人の脳の世界を少しでも想像し理解できれば、やってあげられることが分かります。理不尽に思える振る舞いに頭を悩ませることもあります。そんなとき、相手の気持ちをくみ取りながら、介護の負担も軽くすることができます」

綴じ込み付録では「備える・見つける・相談する・支援を受ける」全てをまとめた「認知症進行度別サポートガイド」も。家族のため、自分自身のために。

認知症が疑われる6つの予兆

①【時間が気にならなくなる】待ち合わせをすっぽかす。約束そのものを忘れる
②【話が噛み合わなくなる】知っているはずの話題を出してもポカンとしたり、話の食い違いが頻繁に起こったりする
③【時間がたつと記憶が消える】なぜ出かけたのかを忘れる。3分以内に思い出せない
④【物事が1回で済まなくなる】同じことを繰り返し尋ねたり、話したりするようになる
⑤【いつもしていたことをしなくなる】長年の習慣をしなくなる
⑥【気持ちが以前より抑えられなくなる】何気ないことで逆上したり、感情の起伏が激しくなったりする
 

「健活手帖」 2022-06-24 公開
執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。