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【ベストセラー健康本】最新医学は「人の命」にどこまで迫っているのか 『そろそろタイムマシンで未来へ行けますか?』

【ベストセラー健康本】最新医学は「人の命」にどこまで迫っているのか 『そろそろタイムマシンで未来へ行けますか?』
予防・健康
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自動運転が実現し、誰もがスマートフォンという“電話機”をポケットに入れて歩き回っている。超高額だが宇宙旅行もすぐそこだ。その昔、夢に描いた「未来の世界」が現実となったわけだが、最新医学は「人の命」にどこまで迫っているのだろう。そんな夢の行方が書かれた『そろそろタイムマシンで未来へ行けますか?』(飛鳥新社刊、1650円)が話題だ。

著者はJAXAの人工衛星開発プロジェクトチームの元スタッフで、現在は宇宙ビジネスの専門家として情報を発信する齊田興哉氏=写真。サブタイトルに「SFで身に付く『科学』の教養」とある通り、かつて誰もが夢に見た「未来の姿」が、いまどこまで実現しているのか、あるいは近い将来実現する可能性があるのか―を、わかりやすく解説した。

数々の「疑問」に答えている(別項参照)が、とりわけ「生命」に関連する項目が目を引いた。たとえば「不老不死になれますか?」という問い。

誰もが憧れるこの疑問に、著者は「“不老不死”はまだだが、“不老有死”という世界はすでに来ている」と答える。

不老の研究は世界中で行われており、イギリスの大学では2型糖尿病の治療薬「メトホルミン」が「寿命に関係する酵素を細胞内で増やす」作用を持つと考え、通常より20歳は老化を遅らせられるのではないか―という考えのもとで研究が進められているという。

「攻撃を受けてもノーダメージの体はつくれる?」という問いには、「傷つけられても再生できる体を作れる可能性はある」と回答。ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)の実用化に向けた研究については折に触れてニュースで取り上げられるが、これらの技術がいまどこまで進化しているのかが、この本では解説されている。

それによると、臓器をまるごと再生する段階には来ていないものの、部分的に機能する臓器のパーツを作ることにはすでに成功している。一方では超音波をキズを受けた部位に当てることで修復を早める研究も、実用段階の一歩手前まで来ているという。

つまり、従来の医療とは異なるアプローチで、従来と同等以上の治療成果が見込める時代に差し掛かっていることは事実であり、長生きをすればいずれその恩恵に浴することも不可能ではない、ということなのだ。

本書の編集を担当した飛鳥新社の江波戸裕子氏はこう語る。

「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ジュラシック・ワールド』『スパイダーマン』などのSF映画の内容が、『今のテクノロジーなら、実現可能か?』という企画です。クイズ形式なので大人も子どもも楽しく読めます」

読むだけでワクワクし、それでいて役立つ知識が身に付く楽しい1冊。オススメです。

最新科学のQ&A

・タイムマシンで未来や過去に行けるの?→過去は難しいが、未来は行けるかも
・宇宙人は存在する?→宇宙のどこかには「いる」
・「不老不死」は可能?→「不老有死」なら可能
・ブラックホールを見ることはできる?→肉眼では無理だが、見ることはできる
・傷ついても再生できる体は作れる?→可能性あり
・サイボーグ人間は作れる?→人間は無理だが動物や昆虫レベルではすでに実現している

※本書から一部抜粋

「健活手帖」 2023-04-21 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
竹中 秀二
学生時代から食品業界の専門紙でアルバイト原稿を執筆。大学卒業後は出版社に勤務し、児童向け書籍や学術誌の編集を担当。その後フリーとなり、新聞、雑誌で医療健康関連の取材を重ねる一方、医療や芸能関連書籍の企画・編集・取材・執筆を行う。