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【ベストセラー健康本】健康リスク知りつつ酒を楽しむ方法『酒好き医師が教える 最高の飲み方』

【ベストセラー健康本】健康リスク知りつつ酒を楽しむ方法『酒好き医師が教える 最高の飲み方』
予防・健康
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γ―GTPや中性脂肪、尿酸値などを気にしつつ、「酒は百薬の長」とばかり飲み続ける人は少なくないだろう。「このままで良いのか?」と不安もよぎる。そんな人にお勧めの1冊が『酒好き医師が教える 最高の飲み方』(日経ビジネス人文庫)だ。

肝臓専門医・浅部伸一氏=写真=の監修のもと、エッセイスト・酒ジャーナリストの葉石かおり氏が消化器内科や精神神経科、泌尿器科、産婦人科、乳腺外科、臨床栄養学、薬学など幅広く専門家に取材した注目本の文庫化だ。

本書が信頼できるのは、飲酒の健康効果についての研究結果もあるものの、まだエビデンスレベルが「やや弱い」一方で、「飲酒は多くの病気のリスクになる」という事実から目を背けていないこと。医師が決まり文句のように言う「お酒は適量で」「たしなむ程度」に逃げない。

著者は医療の専門家ではないが、だからこそ「酒好きを代表して、酒飲みの素直な疑問や不安を専門家にぶつけてみようではないか」という思いが原点にある。たとえば【正しい飲み方】についても説得力じゅうぶん。

悪酔いを防ぐには、アルコールの血中濃度を急激にアップさせない。アルコールの95%は小腸で吸収されるため、いかに胃でのアルコール滞留時間を長くし、小腸へ送る時間を遅くするかが鍵だという。具体的には―。

①悪酔い対策は、「油もの」のつまみを先に…油分は胃での吸収時間がとても長く、消化管ホルモンの一種・CCK(コレシストキニン)などが働き、胃の出口を閉めて胃の中を攪拌(かくはん)する。最初に食べるつまみは、魚介のカルパッチョ、マヨネーズを使ったポテトサラダや唐揚げ、ポテトフライなど。

②「牛乳」「キャベツ」も効果アリ…牛乳には4%の脂肪分が含まれているほか、タンパク質が多く含まれているため、胃粘膜の保護効果が期待できる。また、キャベツに含まれるビタミンU(キャベジン)には、胃の粘膜表層のムチンを増やす働きが。

③悪酔い予防にはタウリンやセサミンを…上昇してしまったアルコール血中濃度はすぐには下がらないため、肝臓の代謝を助ける成分、タコやイカに含まれるタウリン、ごまなどに含まれるセサミンなどを摂取する。

飲酒が身体に与える影響にはかなりの個人差がある。そのため、本書はあくまで「お酒」の健康リスクを知りつつ、享受したい人が「どの程度のリスクなら許容できるのか」を考える本である。

酒飲み諸氏の同志として監修の浅部医師はこうメッセージを寄せる。

「ネットには健康情報があふれていますが、まさに玉石混交。何が正しいのか判断が難しい状況です。そこで、多くの専門家に丁寧に取材することで、『飲酒と健康』について信頼できる情報を幅広く網羅したのが本書です。生きていく上でリスクをゼロにすることはできませんが、本書の情報を参考にしながら自分が好きなお酒を『健康的に』楽しんでください」

絶対NG!“危険な”飲み方

□寝酒の入眠効果は一時的で、鬱のリスクも
□「酒でクスリ」は絶対にダメ
□酒飲みの口は臭い? 気づかない“スメハラ”に注意
□冬の飲酒後の入浴には「命の危機」も
□アルコール依存症は109万人、予備軍は980万人!

(2013年厚生労働省研究班の調査)
※本書第7章から一部抜粋

「健活手帖」 2023-03-31 公開
執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。