国内の患者数2200万人ともいわれる「ドライアイ」。そんな目の疾患に、最新の治療技術で挑む眼科医が、今回のブラックジャックだ。
東邦大学医学部教授で同大医療センター大森病院眼科診療部長を務める堀裕一医師は、「究極のスペシャリスト」に憧れを抱いて眼科を専攻。角膜とオキュラーサーフェスという2つの専門性を武器に、クリニックでは対応できない重症の眼疾患の診断と治療に当たっている。
角膜の疾患と言えば、感染症や「濁り」が生じるものが中心。堀医師は、角膜移植を柱に高度な治療に取り組んできた。
「私自身日本アイバンク協会の役員でもあり、ドナー候補を増やす取り組みに力を入れてきましたが、日本ではまだドナー不足が続いています。1人でも多くの人の理解と協力が得られるように努力していきたい」と抱負を語る。
もう1つの専門である「オキュラーサーフェス」については説明が必要だろう。簡単に言ってしまえば「ドライアイに対する外科的療法」だ。
「目の表面に潤いを与える涙は、マイボーム腺という器官から分泌されます。何らかの原因で涙の分泌が低下したとき、このマイボーム腺に特殊な光を当てて涙の分泌を促すIPLという治療法が開発され、近年導入が進んでいます。これを従来の点眼薬による治療に組み合わせることで、より高い治療効果を目指すことが可能です」
ドライアイの苦しみは個人差が大きく、長年眼科医院に通院していても効果が現れない人は多い。そんな“隠れ重症患者”の最後の受け皿として、堀医師の存在感は絶大だ。手腕を頼って首都圏全域はもちろん、地方からも患者がやって来る。
パソコンやスマホの普及で、近年は小児のドライアイも増えている。堀医師にかかる期待は高まるばかりだ。
堀裕一(ほり・ゆういち)
1995年大阪大学医学部を卒業し、同大医学部附属病院眼科研修医。2001年米ハーバード大学スケペンス眼研究所留学。09年東邦大学医療センター佐倉病院眼准教授。14年から現職。日本角膜学会理事、日本コンタクトレンズ学会理事長、日本シェーグレン症候群学会理事他。医学博士。趣味はスポーツ観戦(野球は阪神と千葉ロッテファン)。