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高難度の直腸がんの名医が東京に拠点 日本医科大学付属病院・消化器外科講師、上原圭さん

高難度の直腸がんの名医が東京に拠点 日本医科大学付属病院・消化器外科講師、上原圭さん
病気・治療
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名古屋で、高難度の直腸がんと局所転移の手術を行い、全国的な知名度を誇っていた“骨盤外科医”が東京にやって来た。上原圭医師。名古屋大学医学部の所属だったが、この春から日本医科大学医学部消化器外科講師として、同大付属病院で診療をスタートさせた。

上原医師の得意とする手術は、骨盤内で高度に進行した直腸がんや「直腸がんをはじめとした手術後の骨盤内の再発転移がん」の切除術だ。

「現代の医学では、遠隔転移は防ぎようがないけれど、局所再発は最初の手術のクオリティー次第でリスクを下げることは可能です。だからこそ局所再発には外科医が責任を持って取り組むべきだと思うんです」

そう語る上原医師は、一般的なガイドラインでは「手を付けるべきではない」とされる高難度の症例でも、確実に、安全に切除できると判断できれば「やる価値はある」と考える。

「もちろん、患者さんがその手術を受けることに“生きる目的”を持っていることが大前提ですが…」

そんな上原医師の姿勢と技術は消化器外科領域で広く知られており、「自分の病院では手術できない症例」が全国から名古屋に紹介されてきていた。今回上原医師が東京に本拠地を移したことは、東日本の患者にとって大きな朗報となる。

「いまは自分で手術ができるけれど、自分がいなくなっても手術ができるような体制を作っておくことが大事だと思うんです。その意味で、チーム力を高めることが喫緊の課題ですね」

上原医師のモットーは、「症例を選り好みしないこと」。簡単な手術だけで安全運転するのではなく、難しい症例にも安全性を保ちながら挑んでいくことで技術は進化する―という考えなのだ。

そんな名医が東京・千駄木の日本医大病院にやって来た―という事実を、まずは記憶にとどめておいてほしい。

上原圭(うえはら・けい)

日本医科大学消化器外科講師。1996年、名古屋大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院、名大医学部附属病院、国立がんセンター(現国立がん研究センター)中央病院等に勤務。名大消化器外科1講師を経て、2023年から現職。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本大腸肛門病学会の専門医・指導医、大腸癌治療ガイドライン委員会委員他。趣味は旅行と風景写真。

「健活手帖」 2023-04-22 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。