がん 医師・名医

5年生存率10%未満、難攻不落の膵がんに正面から取り組む東京女子医科大学消化器病センター消化器内科講師・高山敬子さん

5年生存率10%未満、難攻不落の膵がんに正面から取り組む東京女子医科大学消化器病センター消化器内科講師・高山敬子さん
病気・治療
文字サイズ

多くのがんが5年生存率60%以上を達成する中、全国平均で唯一10%に届かないのが膵(すい)がんだ。初期症状がほぼないことから早期発見が難しく、またひとたびがんができると急速に進展していく悪性度の高さから、最も恐れられている病気だ。

東京女子医科大学消化器病センター消化器内科講師の高山敬子医師は、そんな膵がんの診断と治療に取り組む女性医師。

近年、糖尿病や家族歴などの危険因子と、腹部超音波検査で得られる膵臓の微妙な変化(膵管拡張)を根拠に超音波内視鏡等で精密検査をすることで、「手術可能な早期膵がん」を見つける取り組みが全国的に進んでいる。

この「精密検査」は高度な技術を必要とする。高山医師は「自分が医師になったのとほぼ同時に、病院にこの検査法が導入されたので…」と当時から有名だった愛知県がんセンターへ通って技術を習得。困難とされてきた膵がんの早期発見に一役買っている。

一方で、緩和ケア室長を兼務し、進行がん患者の体と心の痛みに向き合ってもいる。

「早期の膵がんを見つけることはとても重要ですが、一方で“置いてけぼり”の患者を作りたくないんです。当院は外科との連携もよく、また早期がんから緩和ケアまでを通して担当するという風土があるので、私にとってはとても働きやすい環境です」

膵がんの治療成績を高めるための腹案もある。

「東京のような大都市では、大学病院が地域医療と密接に連携を取ることが簡単ではありません。ならば、いくつもある大学病院が競い合うのではなく、連携することで患者の取りこぼしをなくしていくべきだと…」

近年の医療は、地域特性を生かした取り組みが成果を挙げている。世界有数の大都市・TOKYOで、人類にとって最強の脅威である膵がんに挑む高山医師。その取り組みから目が離せない。

高山敬子(たかやま・ゆきこ)

東京女子医科大学消化器病センター消化器内科講師。東京都新宿区生まれ。1997年、東京女子医科大学医学部を卒業し、同大医学部消化器内科入局。同大学病院、横浜医療センター等に勤務。2005年から現職。現在、同院がん緩和ケア室長を兼務。日本内科学会認定内科医。日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会・日本超音波医学会の専門医と指導医。日本膵臓学会指導医・評議員他。趣味は読書、映画鑑賞、石けん作り。
 

「健活手帖」 2022-10-29 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。