転倒予防 Dr.ムトーの「転ばぬ教室」

Dr.ムトーの「転ばぬ教室」(15)~「マイプログラム」で転倒予防 大切なのは楽しく続けられること

Dr.ムトーの「転ばぬ教室」(15)~「マイプログラム」で転倒予防 大切なのは楽しく続けられること
予防・健康
文字サイズ

転倒予防のためにどんな運動やスポーツをするといいですか? とよく聞かれます。

「転倒予防教室」ではさまざまなプログラムを用意していて、たとえば以前、「転倒予防のための太極拳リズム体操」を開発しました(島根県雲南市の「身体教育医学研究所うんなん」よりリーフレットを発行をしています)。太極拳には転倒予防の効果があることが学術的に実証されています。

また、みなさんが子ども時代、おそらく眠たい目をこすりながら行った「ラジオ体操」も、転倒予防に効果があります。

具体的に、転倒予防に効果的な運動のポイントは3つあります。

  1. 立って行うこと(体重が十分かかること)
  2. 前後左右へのすばやい移動があること
  3. 上下に動く(膝の曲げ伸ばし)があること

この3つを取り入れてからだを動かすことが大切です。

しかし、それ以上に大切なことがあります。それは、自分が興味を持ち、楽しく、長く続けられる活動であること。ですから私は、冒頭の質問には、「あなたの“マイプログラム”を持ってください」と答えています。

スポーツでなくてもいいのです。フラメンコやフラダンス、バレエ、日本舞踊といった踊りは、先ほど述べた3点の動きが入っている上に、音楽に合わせてからだを動かすので協調性も必要になります。何より楽しいのがいい。表現活動は人生を豊かにすると思います。

ただ、ダンスをするのはどちらかというと女性が多いため、男性はどうしたらいいですか、と聞かれることがあります。おすすめは武道です。柔道、剣道、少林寺拳法。段などを目指さなくてもいいので、肩の力を抜いて、健康と楽しみためにやってみてください。

転倒予防というと運動やスポーツに意識が行きがちですが、日本の伝統文化である「茶道」も効果的です。

茶道

 

茶道には蹲踞(そんきょ)姿勢が多く、足腰が鍛えられます。そして無駄のない美しい立ち居振る舞いを身に付けることで、からだのみならず、心も整えられるのがいいところ。

ご縁あって、私は表千家流の一つ、江戸千家の当代(10代目)の宗匠・川上宗雪氏と親しくさせていただいています。講演でご一緒したり、プライベートでも、健康やからだについての意見交換を重ねています。まさに「喫茶往来」(お互いの家に招いたり招かれたりして、お茶と語り合いを大切にすること)。500年の歴史を有する伝統文化と、まだ25年の転倒予防活動とが結びつけてくれたお茶のご縁に、感謝しています。

「健活手帖」 2022-07-30 公開
監修者
医師、東大名誉教授
武藤 芳照
1950年生まれ。医師。75年名古屋大学医学部卒業。東京厚生年金病院整形外科医長、東京大学教育学部教授、同大学理事・副学長、日本体育大学保健医療学部教授などを歴任。日本転倒予防学会初代理事長、一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構代表理事。スポーツ医学、身体教育学等の著作は100冊を越える。現在、一般社団法人東京健康リハビリテーション総合研究所代表理事・所長。東京大学名誉教授。