転倒予防 Dr.ムトーの「転ばぬ教室」

Dr.ムトーの「転ばぬ教室」(12)~テレビを見ながら「座って」できる筋力増強体操

Dr.ムトーの「転ばぬ教室」(12)~テレビを見ながら「座って」できる筋力増強体操
予防・健康
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「Use it, or lose it」=「使わなければ使えなくなる」というように、人のからだは、日頃、使っていないとその機能がどんどん衰えていきます。 加齢とともに、まちがいなく筋力は低下していきますから、何もしなければ弱くなる一方です。とはいえ猛暑やコロナ禍で、外に出かけられない日も多いですね。

ということで今日から3回にわけて、家の中で、初心者からできる転倒予防体操を紹介していきます。第1回の今日は、座ったままできる筋力増強体操です。

ザ・あし文字

椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をぴったりつけます。手で椅子をしっかり握るか、膝の上に置いてください。片脚を太ももから膝までまっすぐに上げて伸ばし、足首は直角にし、その状態で空中に文字を書きます。このとき、上げない方の脚は、床にしっかりつけておいてください。

右脚で、自分の名前を漢字で書いてみましょう。次に左脚で、パートナーや友人の名前などを書きます。好きな芸能人の名前でもいいでしょう。一人の名前を書くだけで、かなり太ももが疲れますので、左右ともに一人ずつで十分です。

テレビを見ながら手軽に行えて、太もも前(大腿四頭筋)の筋力がアップします。腰を反り過ぎると腰痛を起こしますので、姿勢を保つことが重要です。

 

ザ・ももあげ

これはほとんど名前通り、座りながら、ももを上げる体操です。

姿勢は「ザ・あし文字」と同じく、椅子に深く腰掛け、背もたれに背中をぴったりつけ、手で椅子をしっかり握ります。

まず、右の膝を軽く曲げ、お尻が浮かない程度に持ち上げ、3秒キープします。持ち上げる高さは10~20センチを目安にしてください。あまり高く上げる必要はありません。上げない左足は、床にしっかりつけておく。次は左膝を曲げて上げます。左右を交互に上げて、1日2~3分やってみてください。太ももの前面の筋肉の筋力アップによって、歩行時にしっかり脚全体が上がるようになります。

運動は楽しくやるのが大事です。音楽を聴きながら、あるいはテレビの歌番組で歌手の歌に合わせて行進のように行うと、より楽しく運動できると思います。

イラスト・内山弘隆

「健活手帖」 2022-07-27 公開
監修者
医師、東大名誉教授
武藤 芳照
1950年生まれ。医師。75年名古屋大学医学部卒業。東京厚生年金病院整形外科医長、東京大学教育学部教授、同大学理事・副学長、日本体育大学保健医療学部教授などを歴任。日本転倒予防学会初代理事長、一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構代表理事。スポーツ医学、身体教育学等の著作は100冊を越える。現在、一般社団法人東京健康リハビリテーション総合研究所代表理事・所長。東京大学名誉教授。