「年寄り“に”冷や水」
と、私は言っていますが、高齢者こそ、水分補給が必要です。日常の水分不足や脱水症状は、体調不全や健康障害を引き起こし、転倒に至ることがあるからです。
そもそも高齢になると、水分不足に気づきにくくなります。喉の機能が衰え、体は欲していても、喉の渇きを感じなくなってくるからです。ですから喉が渇いていなくても、こまめに水分を取ることが大切です。
1日、何ミリリットル飲めばいいですか? と聞かれたときの私の答えは、
「あと2杯!」。
毎日、今日は何ミリリットル飲んだ、あと何ミリリットルだと考えるのは面倒でしょう。あと2杯というわかりやすい心がけで、毎日の習慣は変わるものです。
具体的な数字をお伝えしますと、人が生きるのに必要な1日の水の量は約2500ミリリットルといわれています。
一方、私たちは1日の食事で約1000ミリリットルの水をとり、食べ物を分解するときに約300~350ミリリットルの水分(代謝水)を使っている。これらを引くと、1日に約1200ミリリットルの水を飲めば、必要な水分を確保できることになります。
ということは、500ミリリットルのペットボトルにして2~3本。これらを、起床時や日中、運動中や運動のあと、入浴の前後や寝る前などに分けて、こまめに飲むとよいでしょう。
運動のあとや食事どきに、冷たいビールで喉を潤したくなる人も多いでしょう。しかし、よく知られているようにアルコールには利尿作用があります。ビールを10杯飲むと、11杯分の尿が出る。喉を潤すどころか、ビールを飲めば飲むほど体から水分が奪われていくのです。アルコールを摂取したあとは、いつもより多めに水を飲みましょう。
コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるカフェインにも利尿作用があります。これらを多く飲む人も、水をよく飲むようにしてください。私はスターバックスなどのセルフサービスのカフェでコーヒーを頼むときも、必ず水もお願いするようにしています。
夜中にトイレに起きたくないために、夕方以降、水分を控える人がいます。確かにトイレに起きるのはおっくうかもしれません。しかし、発想を転換して、こう考えてみてはいかがでしょう。
自分の脚でトイレに行かれるのは幸せなこと。
水分不足で脳血管・心血管の変調をきたして転倒してケガをしたら、自分でトイレに行けなくなるかもしれないのですから。もちろん、トイレに行く時と戻る時には、転倒に十分気を付けて。