行楽シーズン到来。“もれ”の悩みを解消しておくことは大切だ。
「コロナ禍前までは、当社の尿もれケア用品をご使用いただくことで、尿漏れに左右されず旅行を楽しめるようになったというお客さまの声を多数いただいていました」(ユニ・チャーム広報の渡邊仁志氏)というから、再び外出の機会が増すとともに製品の需要が高まりそうだ。
外出時、確かトイレに行ける安心感があるだけで尿意は収まることがある。反対に、トイレに行けない環境におかれただけで尿意が襲ってくる経験はある。
これは尿もれのなかでも「切迫性尿失禁」と呼ばれるタイプだ。医師の関口由紀さん(女性医療クリニック「LUNAグループ」理事長)に解説してもらおう。
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関口由紀医師
「切迫性尿失禁は脳と膀胱の連携にエラーが生じたパターン。尿が十分、膀胱にたまっていなくても、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮しトイレが近くなる過活動膀胱が進行した状態です。その7割の人が突然、我慢できない尿意に襲われてもらしてしまう切迫性尿失禁を経験します」
もうひとつは、「腹圧性尿失禁」というタイプ。
「腹圧性尿失禁は、骨盤底筋という尿道周囲の筋肉と靱帯(じんたい)が緩んだケースです。骨盤底筋は、膀胱、子宮を支え、尿道を締める大事な役割を担っていますが、妊娠・出産でダメージを受けます。若い時であれば、筋肉や血流が元気で、女性ホルモンも豊富なので、スムーズに修復がサポートされますが、年齢と共にそれらが損なわれ、筋力が弱ってくると諸問題が発生します。たとえば、自宅で重い荷物を置いた瞬間、スポーツジムで動いたり、笑ったりといった刺激が加わると“ちょいもれ”してしまいます」
初産が40歳以上、年齢に関係なくお子さんが4人以上の多産の方、赤ちゃんの体重が重かった場合には、尿失禁になるリスクは上がるという。
骨盤底筋は加齢、女性ホルモン低下、体重増加などが原因でも衰え、尿漏ればかりでなく膀胱や子宮、直腸が腟から突出する骨盤臓器脱を引き起こすリスクもある。
「多少の膀胱の収縮でも、骨盤底筋がしっかりしていれば少しぐらいの尿ならキュッと締められるので、もれません。骨盤底筋が緩んでいるとストッパーがきかないので、膀胱が収縮してそのままジャーっともれ出してしまう。腹圧性尿失禁が冬場の寒冷刺激や骨盤底筋の周囲筋の筋力低下、脊髄の神経の問題などで悪化して、切迫性尿失禁に至り、『混合性尿失禁』になる方もます。どちらも軽症の時はちょいもれですが、重症になると量が増えてきます。2つの病態が混合した混合性尿失禁の場合は、ほとんどの方が大量に漏れてしまいます」
こうした原因を探って、早めに手を打つためには、泌尿器科に足を運び専門医に相談することが大切になる。
関口由紀(せきぐち・ゆき)
女性医療クリニック「LUNAグループ」理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト「フェムゾーンラボ」社長、日本フェムテック協会代表理事。『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引』(径書房)、『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期』(産業編集センター)など著書多数。
尿漏れの原因と種類
【腹圧性尿失禁】
原因:骨盤底筋の衰え症状:咳やくしゃみ、重いものを持ったなど、力んだ時にもれる
【切迫性尿失禁】
原因:脳と膀胱の連動の不具合、過活動膀胱の悪化、脳梗塞の後遺症や脊髄の病気、加齢や骨盤底筋の衰えによっても起きる。
症状:急な尿意とともに膀胱が勝手に収縮。トイレが近くなり、夜中に何度もトイレに起きるようになる。骨盤臓器脱を誘引することもある。