がんより怖い糖尿病体験記⑩~ 糖尿病になりやすい人、なりにくい人、何が違う?

がんより怖い糖尿病体験記⑩~ 糖尿病になりやすい人、なりにくい人、何が違う?
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「糖尿病になりやすい人」の一般的な特徴を列記すると、次のようになります。

親や他の血縁者に糖尿病になった人がいる▽運動不足である▽ストレス過多の生活をしている▽肥満(メタボ)体型である▽麺類、丼物を好んで食べる▽甘いもの好き▽アルコールをよく飲む

したがって、これらの要素と反対の人は「糖尿病になりにくい」となります。

しかし、糖尿病(2型糖尿病)は圧倒的に中高年になってから発症するので、老化現象と捉えれば、誰もがなる可能性があるのです。

日本人は欧米人より肥満が少ないにもかかわらず、人口当たりの糖尿病患者数は欧米に匹敵します。つまり、糖尿病は国民病と言っていいのです。これは、日本人がもともとインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が脆弱であるからだとされています。糖尿病は遺伝するのです。

よって、代々、糖尿病患者が多い家系に生まれると、糖尿病になるリスクは高まります。

つい最近、神戸大学の研究グループが、日本人の2型糖尿病の原因遺伝子の1つとされる「EIF2AK4」遺伝子が糖尿病を引き起こすメカニズムを世界で初めて明らかにしました。メカニズムが明らかになれば、個別の遺伝子治療が可能になるので、これは明るいニュースです。

とはいえ、糖尿病患者を親に持った子供が必ず発症するわけではありません。また、親やその上の世代に糖尿病患者がいなくとも、糖尿病になる人はいます。

つまり、糖尿病の原因には遺伝要因(生まれつきの体質)とともに、環境要因(運動不足・過食・偏食・肥満などの生活習慣、加齢、ストレス)も大きく、この組み合わせが高いほどなりやすいわけです。

遺伝要因は変えられないとしても、環境要因は変えられるので、日頃から生活習慣に気を使うほか予防法はありません。とくに食事習慣は重要です。暴飲暴食はもちろんのこと、糖質・炭水化物の摂り過ぎは禁物です。

かつて、糖尿病患者の寿命は10年短いと言われました。しかし、最近は一般の人との差が縮まっています。これは治療法が発達したからです。ただし、悪化した糖尿病患者の多くが最終的に透析治療を受けますが、60代で透析治療を始めた人の平均余命は男女ともに約10年です。平均寿命まで生きられないのです。

早い時期からの予防が重要となりますが、糖尿病の場合は遺伝要因が強いので、最新医学の見地から「遺伝子検査」を受けることが重要です。すでに遺伝子検査は「次世代シーケンサー」というテクノロジーによって実用化されています。また、「分子バイオマーカー」という方法もあります。分子バイオマーカーは、血液や尿などに含まれる特定のタンパク質や、DNAやRNAなどの核酸、脂質などを検知し、その量や質によって体の状態や、疾患の有無、進行度などがわります。こうした最新テクノロジーにより、糖尿病などの疾患は、発症前に知ることができるのです。

さらに、AIも導入された最新医学では、遺伝子のスイッチをオンからオフにするという処方が考案されています。遺伝子は生命の設計図とされるので、これをオフにすることで、将来の病気の発症を予防してしまうのです。

こうした遺伝子レベルの最新医療が効果を発揮するのは、次の世代です。現在、社会の第一線にいる働き盛り世代や、若い世代の方は、遺伝子検査をして、自分という個体の遺伝的特質を知っておくべきでしょう。糖尿病は発症してしまったら、もう元には戻れません。

「健活手帖」 2023-04-15 公開
執筆者
医師・ジャーナリスト
富家 孝
1947年大阪府生まれ。72年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『不要なクスリ 無用な手術』(講談社)ほか著書計67冊。