闘病記 がんより怖い糖尿病体験記

がんより怖い糖尿病体験記⑧~糖尿病患者にとってゴールデンウイークは「鬼門」

がんより怖い糖尿病体験記⑧~糖尿病患者にとってゴールデンウイークは「鬼門」
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糖尿病は、一度発症したら治すことはできないため、悪化しないよう、血糖値、血圧値といった数値をひたすらコントロールすることが治療のポイントです。血糖値を下げるためにクスリを服用しますが、大切なのはなんといっても食事です。炭水化物に偏った食事を長年続けると、発症リスクが高まります。

2019年4月、アメリカの医学誌に、死因に関する最新の研究報告が発表されました。ワシントン大学などによるこの研究は、約40カ国の130人以上の研究者が参加した大規模なもので、「不健全な食事」がいかに死に直結するかを明らかにしました。年齢、性別、地理的な影響、経済状態にかかわらず、食事の内容が死因と明らかに関連していたのです。

17年、世界で死亡した1090万人の主な死因は、1位が心血管疾患、2位ががん、糖尿病はこれに続く3位。このうち、心血管疾患による949万7300人、がんによる91万3100人、糖尿病による33万8700人の死に、明らかに「不健全な食事」が関連していたのです。

では、どんな食事が不健全かと言うと、全粒穀物や野菜、果物の摂取量が少ないこと、塩分の摂取量が多いことです。また、脂肪の多い肉類、糖質、トランス脂肪酸の摂り過ぎも指摘されています。つまり、炭水化物の摂取過多が、もっとも不健全な食事なのです。

日本人は主食がお米ですから、多くの人が炭水化物を摂りすぎていると言えます。

炭水化物の摂取過多となると、日本の場合、冬にもっともリスクが高まります。冬になると、温かい鍋物、汁物などを食べる機会が多くなります。ご飯はもとより、うどん、餅など、炭水化物の摂取量も増えます。しかも、年末年始には、つい暴飲暴食しがちです。冬場の鍋物、うどん、ラーメン、餅、おせんべい、ミカンなどは、血糖値の上昇に直結します。

医者の経験知で言うと、糖尿病患者さんは桜の季節になると増加します。人工透析が必要と診断される患者さんが増えます。これは、寒い時期、ついついガイドラインを守らなくなっていた人が多いからです。

医者は糖尿病患者に「これを守れなかったら糖尿病は悪化しますよ」という数値を示します。「HbA1c」(ヘモグロビン・エイワンシー=過去2~3カ月の血糖の平均値)で言えば、6.5未満は死守でしょう。

しかし、約4割の患者さんが冬場にガイドラインを踏み外します。自覚症状がない患者さんはとくにそうです。

糖尿病は悪化すると死に直結します。そのことを自覚できないのです。治療が人工透析に移行して、初めて後悔する患者さんは多いのです。

糖尿病が悪化すると、人工透析が必要な腎臓機能の低下に加えて、合併症として目の病気である「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれなど末梢神経が侵される「糖尿病性神経障害」などを引き起こします。さらに、「心筋梗塞」「脳梗塞」による死のリスクが増大します。

つまり、糖尿病患者さんにとって、春はもっとも大切な季節になります。冬場の食生活の乱れを、ここでリカバリーする必要があります。そして、ゴールデンウイークも鬼門です。ここで再度乱れたら、すべてが無意味になります。

コロナ禍では、行動制限などの影響もあり、糖尿病患者が増えました。食事とともに適度な運動も欠かしてはいけません。 

「健活手帖」 2023-04-13 公開
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執筆者
医師・ジャーナリスト
富家 孝
1947年大阪府生まれ。72年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『不要なクスリ 無用な手術』(講談社)ほか著書計67冊。