闘病記 がんより怖い糖尿病体験記

がんより怖い糖尿病体験記⑥~必要ないのに透析患者にされてしまうことも…

がんより怖い糖尿病体験記⑥~必要ないのに透析患者にされてしまうことも…
コラム・体験記
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糖尿病が悪化し「腎炎」になると、最終的に人工透析をしなければ生きられなくなります。患者さんは、標準的に週に3回、1回4時間、通院して透析を受けることになります。これは非常に辛いことです。なのに、一部の医者は、このような透析患者を「定期預金」「ドル箱」と呼んでいる現実があります。なぜでしょうか?

それは、いったん人工透析を始めたらやめられないからです。透析患者は死ぬまで治療を受けに来るわけですから、顧客と考えれば“最上のお客さん”なのです。病院にとって、定期的におカネを落としてくれる「定期預金」であり「ドル箱」となるわけです。

医療もビジネスです。ただ、このビジネスが特殊なのは、病気を治してしまったら終わってしまうことです。その点では、自動車の修理などと同じですが、自動車は修理できても、糖尿病は完治できません。

現在、透析患者さんは、全国で30万人以上にも上り、人口比から見ると諸外国に比べて圧倒的に多く、日本は「人工透析大国」と言っても過言ではありません。結果、糖尿病、透析の専門病院も数多く存在します。

これは、単純に言って「透析が必要」と診断される患者が年々増えているからです。糖尿病は生活習慣病であり、ほとんどが中高年で発症しますから、高齢社会の写し鏡とも言えます。

しかし、もう1つの隠れた真実があります。それは、透析患者が“人工的につくられている”ことです。人工透析が必要かどうかの判断は、腎機能、臨床症状、日常生活の障害の程度を点数化して、合計60点以上になったら行われます。しかし、日常生活の障害の程度というのは医者のさじ加減でどのようにも評価できます。したがって、この項目があるために、透析が必要ではない患者まで透析患者にされる可能性があるのです。日常生活の指導で腎炎を予防できる患者に対しても、人工透析が必要と診断して「ドル箱」にしてしまうわけです。

実は病院経営者が現場の医師に、「透析患者をもっと増やせ」と指示していることは珍しくありません。診療報酬の改定は2年ごとに行われますが、人工透析の点数はかなり高いので、病院にとって透析患者は欠かせないのです。

人工透析には保険が効きます。一般的に実費では月40万円ほどかかりますが、患者負担は1万~2万円で済みます。保険により、国が1人あたり年間500万円近く税金で負担してくれているからです。この金額が、医療側にとっては大きな収入源で、表現は悪いですが、透析患者を1人つかまえるとベンツが1台買えると言われるほどです。また、製薬会社にとっても、人工透析は確実かつ大きな収入源です。

必要もないのに人工透析患者にされてしまった患者は、はたしてどれだけいるでしょうか? その実態は闇の中です。

こうした目に遭わないためには、糖尿病と診断された場合、きちんと根拠を聞くことです。

すなわち、空腹時血糖、食後2時間の血糖値、HbA1c値、負荷試験をやったならその値です。開業医の場合、他の科が専門でも内科をくっつけて標榜する(=その分野を診療できる)ことが多いので、あいまいな根拠でも糖尿病の診断を下す例は多いのです。内科がいちばん患者を集めやすいのでそうしているだけで、糖尿病が専門とは限りません。「セカンドオピニオン」を受けることも大切です。医者の言うことを鵜呑みにしてはいけません。

「健活手帖」 2023-04-11 公開
執筆者
医師・ジャーナリスト
富家 孝
1947年大阪府生まれ。72年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『不要なクスリ 無用な手術』(講談社)ほか著書計67冊。