糖尿病と言えば、「血糖値」。高いまま放置すると合併症を起こすので、検査数値によって糖尿病と診断しコントロールします。日本糖尿病学会が定めた診断基準によると、患者さんは検査数値により、次の3つのパターンに分類されます。
- 正常型=正常な人
- 境界型=糖尿病予備軍
- 糖尿病型=糖尿病を発症している人
一般的な糖尿病検査は、企業や自治体などの健康診断や人間ドック等で行われる、「空腹時血糖値」と「HbA1c」(ヘモグロビン・エイワンシー)の測定です。
血糖値検査には、早朝の「空腹時血糖値」がよく使われますが、前日の食事やストレスの影響を受けやすいため、測定条件により変動する難点があります。そのため、「HbA1c」を重視します。「HbA1c」は、測定前2~3カ月間の血糖値の平均点であり、昨日、今日の生活の影響は受けません。
糖尿病の診断には、数値以外の症状や病歴なども加味しますが、やはり数値で判定するのがほとんどで、糖尿病型と診断される数値は、「空腹時血糖値が126mg/dl以上」「HbA1cが6.5以上」です。正常型は「空腹時血糖値が110mg/dl未満」「HbA1cが6.0未満」です。
問題は、(2)の境界型の人で、(3)以下で、(1)以上が該当します。該当した場合は注意信号が点滅していると考え、食事や運動に気を使うべきです。
「空腹時血糖値」は一般的に健康な人は80~90mg/dlです。糖尿病は40歳以上になると発症率が高まるので、40歳以上の場合は、空腹時血糖値が100mg/dl以上になると、「特定保健指導」の対象となります。また、110mg/dl以上となると、これは「メタボリックシンドローム」の基準に該当してしまいます。
このように、糖尿病は常に数値を気にしなければなりませんが、数値だけで判断するのは危険です。というのは、基準値はこれまで何度か変更されてきたからです。男女別、年齢によっても違うわけですし、病気には必ず個人差があります。
2016年に、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、血圧や血糖値、コレステロール値、肥満度などについて緩和した新しい基準値を発表し、それによって医療現場が大混乱するということがありました。
たとえば、基準値の正常の範囲が引き上げられると、それまで境界型だった人間が正常型になります。その逆では、正常型だった人間が境界型になります。
医師の中には、境界型から治療を勧め、場合によっては血糖値降下のためのSU剤を出してしまう者もいるのです。SU剤は低血糖を招くので、境界型で出すのは危険です。境界型は、正常とも病気とも言えない「グレーゾーン」で、ここが治療においてはもっとも悩ましいのです。糖尿病では、境界型のときから病状は進んで行くので、早期治療は大切です。
ただし、治療といってもクスリではなく、食事の改善が第一。「ご飯や麺などの炭水化物を減らし、食後の運動(と言ってもウオーキングで十分)を心がける」ことです。茶わん1杯食べていたご飯を7分目にするだけで、血糖値は下がります。
糖尿病発症の平均年齢は60歳なので、50代になったら、誰もが炭水化物の摂取量を減らしていくのが望ましいのです。また、塩分控えめも有効です。私はずっと、そうしてきました。糖尿病のグレーゾーンですが、専門医たち意見を集約すると、「110を超えたら要注意」。彼らは、これを「110番」と呼んで、治療開始の目安にしています。