闘病記 がんより怖い糖尿病体験記

がんより怖い糖尿病体験記①~一度発症したら治らない。患者は全国に1000万人以上

がんより怖い糖尿病体験記①~一度発症したら治らない。患者は全国に1000万人以上
コラム・体験記
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世の中には1度発症したら治らない病気があります。医者から見ると、治せない病気ということになります。糖尿病はその1つで、その意味で、がんより怖いと言えるかもしれません。私も糖尿病患者の1人です。

現在、糖尿病患者および糖尿病が疑われる人は全国で1000万人以上いるとみられています。ほとんどが高齢者で、糖尿病は、いわゆる生活習慣病の典型的な病気です。もっとも簡単に言うと、血液中の糖分(ブドウ糖)が増えてしまうことです。

血液中の糖の量が増えて血糖値が上がった状態が続くと、疲労感が取れなかったり、のどの渇きが頻繁になったりして、最終的には合併症(神経障害、網膜症、腎不全、心筋梗塞など)を起こします。死に至ることもあるわけです。したがって、糖尿病になったら、血糖値をコントロールし、進行させない治療をすることになります。

糖尿病には1型と2型がありますが、1型は主にお子さんや若い人、2型は遺伝的な体質に食生活や肥満などの要因が加わったために起こるとされ、主に高齢者が発症します。そのため、2型は病気というより老化現象の表れとも言えます。

私が糖尿病と診断されたのは、2005年です。血糖値を検査したところ、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー=過去1~2カ月の血糖の平均値)が7.2と基準値(6.2%未満が優、6.2~6.9%が良)を超えていたのです。以来、血糖値を下げるクスリを服用し、食生活も変えました。

当初は甘く見ていました。自覚症状がなにもなかったからです。しかし、その15年後、狭心症で2回目のステント留置術を受けるために入院したとき、数値を聞いて、腹を決めました。治療を徹底して実行しないと生命に関わるとはっきりと意識しました。この時はHbA1cが9.5もあったのです。

いつか糖尿病になるだろうと自覚していました。それは、母と「父方」と「母方」の祖父も糖尿病を患っていたからです。しかも、プロレスのリングドクター時代から、しゃぶしゃぶを年50回以上、それ以外は中華かチャンコを食べ、食後の甘いものも必ず食べていました。遺伝的な要因に加え、食生活も偏っていれば、糖尿病になりやすいとどの医学書にも書いてあります。

ただ、それを知っていることと、自覚して実行することは別です。いまさらですが、若い時から食生活を心がければよかったと言っても、それは「後の祭り」です。

糖尿病と診断されてから私は、毎日必ず血糖値を測るようになりました。現在は血糖降下剤のDPP―4阻害薬「エクア」を朝夕1錠ずつ服用、その日の血糖値に合わせインスリン製剤「ランタスXR」を2~6単位皮下注射しています。

食生活も変え、炭水化物を摂り過ぎないように心がけています。夕食のご飯は控え、好きだったパスタや焼きそばは、一切食べていません。クスリを飲み始めて2、3カ月して血糖値は下がりましたが、服用を止めると上がるので、クスリが欠かせなくなりました。

とはいえ、やはり糖尿病治療は、食事療法につきます。運動なんかでは追いつきません。間食は絶対にダメ、肉や野菜、果物はOKですが、炭水化物は摂りすぎてはいけません。私の反省を込めてのアドバイスは、家系的に糖尿病が心配な方は、早い段階で、食生活を改善すべきだということです。

「健活手帖」 2023-04-04 公開
執筆者
医師・ジャーナリスト
富家 孝
1947年大阪府生まれ。72年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『不要なクスリ 無用な手術』(講談社)ほか著書計67冊。