シミ・シワ改善

若い頃からの紫外線対策が将来のシワの数を左右する

若い頃からの紫外線対策が将来のシワの数を左右する
エイジングケア
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久しぶりに会った同級生よりもご自身の顔のシワが多く、ショックを受けたことはありませんか? ふだん鏡を見ていても気にならなかったのに、人の顔と見比べたときにシワが増えてビックリ。そんなミドルエイジのシワについて、東邦大学皮膚科学講座の石河晃教授に聞きました。

「シワは、紫外線による光老化が原因です。加齢では、ちりめんシワといって、細かいちりめん状のシワが生じやすいのですが、光老化によるシワは深く太くなりやすいのです。この紫外線による皮膚の変性を日光性弾力線維症といいます」

光老化は紫外線を浴び続けた結果、肌の細胞を変性させ、老化を加速させます。色素のメラニンを作るメラノサイトという細胞が変性すると「シミ」。肌の弾力を支える弾力線維が変性すると「シワ」になるのです。

「肌の弾力は、表皮の下の真皮のコラーゲン線維と弾力線維が支えています。コラーゲン線維は真皮の約90%を占め肌のハリを作るのですが、残りの10%を占める弾力線維が減少すると肌の弾力を維持することができないのです。光老化では弾力線維がダメージを受けて、深いシワにつながります」

空気を入れた風船は、丸くふっくらとしていますが、空気が抜けるとたるみます。肌も弾力線維が減るとたるみ、支えを失った表皮が沈み込んで深いシワを生み出すのです。顔に加えて、首や手の甲などにもシワが生じている人もいるでしょう。

「加齢でも弾力線維は減少していきますが、光老化はそのスピードを加速させるイメージです。若い頃から、いかに光老化を予防するか、それが将来のシワの数を左右するといっても過言ではありません」

春になって気温が上昇してくると、半袖シャツを着て暑さをしのぎたくなりますが、紫外線対策では長袖が基本。顔や首、手の甲など衣類で覆えない部分は日焼け止めをしっかり塗りましょう。また、外出時には日傘も忘れずに。

「光老化は、体内の酸化ストレスにも関係しています。酸化ストレスは老化を後押しし、生活習慣病やがんなどの病気とも関係が深いのです。予防のために、ポリフェノールなどの抗酸化物質の食品をとることもよいでしょう」

紫外線が体内に入ると、細胞に悪い影響を与える活性酸素が爆発的に増えると考えられています。この活性酸素が、細胞の変性や病気を引き起こすのです。それが「酸化ストレス」。「抗酸化」は、酸化を防ぐ働きがある作用のことで、レモンなどに含まれるビタミンCや、赤ワインやリンゴ、緑茶などに含まれる色素の一種・ポリフェノールなどは、優れた抗酸化作用で知られています。

「20代から紫外線対策をしっかりしていると70代でシワがない状態を実現できます。すでに、現在、シワが生じてしまった人は、今からでも紫外線対策を心掛けていただきたいと思います」

若い肌を維持するには、日頃から鏡でシワやシミをチェックしつつ、紫外線対策にしっかり取り組むことが大切。また、「肌のカサカサが治らない」「ホクロが大きく形がいびつになってきた」など、異変があったときには見逃さず、皮膚科を受診しましょう。

「皮膚の病気は400種類以上もあります。単なるシワやシミとよく似ている他の病気もあります。気になるときには皮膚科医にご相談ください」

「健活手帖」 2023-04-12 公開
解説
皮膚科医師、医学博士
石河 晃
東邦大学皮膚科学講座教授、東邦大学医療センター大森病院皮膚科診療部長。医学博士。1986年、慶応義塾大学医学部卒。慶応義塾大学医学部皮膚科などを経て2010年から現職。日本皮膚科学会理事、日本香粧品学会理事長なども兼務し、皮膚疾患と健康維持のための医学技術発展に尽力する。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。