胃・腸

検査で異常が見つからないその不調「胃排出遅延」かも

公開日:2023-04-01
更新日:2023-03-29
検査で異常が見つからないその不調「胃排出遅延」かも
病気・治療
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異動や転勤によって環境が変化する春先は、朝と夜の寒暖差も相まって胃の負担を感じる人が少なくない。胃もたれや胸焼け、膨満感(お腹が張る)などの不調は、多くの人が日常的に抱える現代病の1つだ。

胃の不調が続いているにもかかわらず、病院で検査をしても異常所見が認められないケースもある。そうした胃の不調は、自律神経の乱れが原因とされることが多い。自律神経の乱れによって食べ物を消化し、腸へ送り出す胃の働きが弱まり、胃の中にいつまでも食べたものが残ってしまい、胃もたれや食後の膨満感、吐き気などの不快な症状を引き起こす。このような状況を「胃排出遅延」という。

胃排出遅延は、命に関わるような病ではないが侮ってはいけない。胃の不快な症状を抱えていると、精神的にも肉体的にも負担がかかり生活の質が下がる。内服薬の多くは食べ物と同じように胃で溶けて小腸で吸収されるため、仮に食後の高血糖を抑える飲み薬を内服している場合、薬が効果を発揮する時間帯と血糖値が上昇するタイミングが食い違い血糖コントロールが困難になる可能性もある。

「胃排出遅延を改善するには規則正しい生活を送ることが何より大事です。睡眠や食事のリズムが不規則になると自律神経のリズムも乱れてしまう」と説明するのは、川崎医科大学総合医療センター消化器内科で特任教授を務める春間賢医師。春間医師によると、テレワークも自律神経を乱す原因につながりかねないという。すぐに食べ物が手に入る環境だとつい間食を繰り返してしまうためだ。

「胃は単なる消化器官ではありません。胃と脳は自律神経やホルモンを介して互いに影響を与え合う『胃脳相関』の関係にあります」

お腹が空いたという感覚は、胃から分泌される食欲ホルモンであるグレリンが脳を刺激することによって生まれる。食事の際には、食べ物の情報が脳に送られ、脳のシグナルが自律神経を介して胃に伝わり、胃の動きや胃酸分泌が調節される。節度を守って規則的に食事を摂ることで自律神経も安定してくるというのだ。

食事内容にも配慮が必要。揚げ物やインスタントラーメンなど脂質の取り過ぎには気をつけたい。逆に積極的に摂りたいのがヨーグルトや牛乳などの乳製品、大豆製品など胃にやさしい食材だ。

春間医師が率いる研究グループは2021年、乳酸菌の一種である「LG21乳酸菌」を使用した臨床試験から、LG21乳酸菌を継続摂取することで自律神経の働きを整えるとともに胃脳相関を健全化し、結果的に胃排出遅延が改善される可能性があることを明らかにした=グラフ。

「長続きする胃の不調を改善するのは医薬品をもってしてもなかなか対応が難しかったので、普段からよく食べられているヨーグルトが有効であったことは予測していなかった。このように科学的にLG21乳酸菌の有効性が明らかにされたので、ぜひLG21乳酸菌を日々の健康に役立ててほしい」

「健活手帖」 2023-03-01 公開
執筆者
「健活手帖」 編集部