患者の不安減らす“癒やし空間”を追求、ピアノによる生演奏もある「浅見眼科手術クリニック」
「健活手帖」編集部

心の弱っている患者が前向きな気持ちで手術に臨めるように“癒やし”を重視するという浅見眼科手術クリニック(愛知県大府市)の浅見哲院長。質の高い医療提供と患者の癒やしを両立、「来てよかった」と思える空間を目指している。
「医師の高圧的な患者対応を見てきてそれは違うと思いました。弱い立場の患者さんには高いハードルですから」
20年以上大学病院や眼科専門病院で治療した浅見院長はこう話す。名古屋大学医学部附属病院医局長時代、網膜剥離(はくり)や眼球破裂などの手術にあたった。
「関連病院から緊急患者が昼夜問わず送られきます。無我夢中でした」
痛感したのが医師と患者の信頼関係の重要性。
「手術は患者にとって怖いもの。しっかり説明し患者がイメージを持てれば不安を減らせます」
病院名に「手術」と明記するのもこだわりだ。
「自分の一番の強みを出した方が患者さんに分かりやすいでしょう」
クリニック開設は2021年7月。コロナ禍での船出となった。
「周りから『もう少しコロナの様子を見たら』といわれました。ただ年齢が50代に迫っていたのでこれが人生のタイミングと思い切りました」
開設で最新手術機器を導入する一方、ホテルで使われる照明器材やアロマオイルなど“癒やしの空間”も追求した。特徴的なのは待合室にある白いグランドピアノだ。
「音大出身の方に生演奏に来ていただき手術を受ける患者さんの緊張をほぐしてもらいます」
演奏は演歌やポップスなど。患者が一緒に歌うシーンもあるという。
「患者さんにとって楽しい場にするための“おもてなし”です」
人間は外界からの全情報の80%を視覚から得るという。だからこそ病気になると不安は増す。代表的な病気は加齢に伴う緑内障や白内障だ。
「視野が欠けていく緑内障は両目で補い合うので中期まで気付かない」
一方、眼科治療の技術と医療機器の進歩は著しく緑内障も早期発見・治療が可能だ。
「現在は網膜を検査して神経線維を機器で測定でき、ごく初期から分かります。適切なタイミングで治療を受ければ生涯視野を保てます。自覚がない患者さんには、なぜ手術が必要か分かりにくいので重症化リスクなどをよく説明します。手術して翌日からよく見えるようになれば患者さんには大きな喜びですし、私にも充実感があります」
昨年は1300件以上の眼科手術を行った。これからも患者の笑顔を原動力に励む覚悟だ。
浅見哲(あさみ・てつ)
浅見眼科手術クリニック院長。三重大学卒業。2004年に名古屋大学医学部大学院修了、医学博士取得。名古屋大学附属病院、豊橋市民病院などを経て21年7月から現職。眼科手術が専門。