免疫力

マスク自由化後の“体内マスク”対策、ストレス解消や乳酸菌で免疫力向上を

公開日:2023-04-01
更新日:2023-03-28
マスク自由化後の“体内マスク”対策、ストレス解消や乳酸菌で免疫力向上を
予防・健康
文字サイズ

「屋内外問わずマスクの着用は個人の自由に委ねる」。そんな政府の方針が2023年3月13日から実施に移された。医療機関受診時や通勤ラッシュなどの混雑した空間内では、マスク着用が有効であると周知されるなど、完全脱マスクとまではいかないが、日本社会も徐々にノーマスク時代へとかじを切っていきそうだ。

とはいえ、急にマスクを外すことに抵抗感を覚える人は少なくない。精神科医で、ベストセラー作家としても注目を集めるルネクリニック東京院(東京都千代田区)院長の和田秀樹医師は、「個人の自由という曖昧な基準でなく、マスクは原則つけなくて良い、というくらいの強いメッセージを送らないと、着用し続けるケースが多いのではないか」と話す。

その上で和田医師は、「マスクには、感染症をうつすことをある程度予防する効果があるのは事実ですが、デメリットもある」と説明する。和田医師によると、マスクをかけると二酸化炭素を多く含む呼気を吸い込むため、酸欠気味になるという。酸欠状態では、思考力や記憶力といった脳の力が低下したり、まれに頭痛が起きることも。酸素不足で血の巡りが悪くなると、免疫細胞が全身に行き渡りづらくなり、免疫力の劣化も招きかねないそうだ。

感染予防のマスク着用が、かえって免疫に悪影響を与えるとしたら本末転倒だろう。

和田医師は「マスクを外すこのタイミングで、マスクに代わる人体の防御機能(免疫)を上げる工夫を日常生活に取り入れることが大切です」と推奨する。いわば“体内マスク”を強化するわけだ。

免疫強化のために大切な鍵が、ストレス緩和だ。ストレスがたまってイライラすると免疫機能はガクンと衰える。そこで和田医師が勧めるのが、3S(スピーチ、スマイル、スポーツ)の励行である。

「人と会話し、笑うことで、自然免疫の1つNK活性が高まり、感染症に強い体作りにつながります。またスポーツをすることで、精神の安定や安心感につながる神経伝達物質、セロトニンが分泌され、ストレス解消が期待できます。もちろんマスクを外して、30分程度散歩するだけでも十分です」

体内マスクの強化には、食事も重要だ。さまざまな種類の食材をまんべんなく食べて、栄養状態を良好に保つことが一番だが、その中には免疫に良いといわれる食べ物もある。

「免疫細胞をつくる材料となるコレステロールを含む肉類は、できればきちんと食べた方がよい。ビタミンCを多く含む食品も、免疫力向上が期待できます。体内の免疫細胞の7割が腸に集まっていることから、腸内環境を整える乳酸菌やヨーグルトも推奨できます」と和田医師。

ビタミンCは、緑黄色野菜や果物に多く含まれている。熱に弱いので、効率的に摂取するには、熱を加えないことだ。

また近年、高齢者施設入居者を対象とした観察研究で、乳酸菌OLL1073R―1株で発酵したヨーグルトの摂取により、唾液中のIgA抗体と呼ばれる免疫の量が増加し、風邪罹患リスクが低減したとの報告がある。和田医師も、毎日のヨーグルト摂取を習慣化しているという。

「健活手帖」 2023-03-17 公開
解説
精神科医
和田 秀樹
精神科医。1960年6月7日、大阪府生まれ。62歳。1985年、東京大学医学部卒業。東大医学部付属病院精神神経科、高齢者専門の浴風会病院、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローなどを経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授、緑鐡受験指導ゼミナール代表。老年精神医学、受験などの著書多数。