肥満 肥満症で死にたくない

肥満症で死にたくない③~マスク緩和で会食が復活、ビュッフェ形式の食べ過ぎ傾向に注意

肥満症で死にたくない③~マスク緩和で会食が復活、ビュッフェ形式の食べ過ぎ傾向に注意
病気・治療
文字サイズ

コロナ禍の3年間、在宅勤務などによって運動不足となり体重が増えた人は、「コロナ緩和後」も要注意だ。

「すでに各地で会食が復活しています。この傾向は夏に向けて、もっと強まるでしょう。ただし、運動をあまりせずに食べ過ぎれば、肥満症(病気を伴う肥満)のリスクが一気に高まります。それは平均寿命が急落した沖縄県が証明しています」

琉球大学大学院医学研究科の益崎裕章教授が警鐘を鳴らす。益崎教授が研究の拠点を置く沖縄県は長く長寿県として知られたが、2000年の平均寿命で沖縄県の男性ランキングが前回(1995年)調査の全国4位から26位に急降下し、健康問題上の「沖縄クライシス(危機)」と衝撃を与えた。

昨年12月発表の2020年データでは沖縄県の男性の平均寿命は全国43位に、女性も16位まで下がった。沖縄がたどった道は他の地域の人たちにとって、肥満症にならず健康に長生きするうえで参考にできないものか。益崎教授が解説する。

「沖縄の健康長寿は、玄米食やゴーヤに代表される質素で健康的な伝統食の習慣と、年を取っても農作業などで体を動かすことを続けことによって実現できていました。100歳を超えても元気に暮らす『百寿者』が多いことでも沖縄は有名になりました」

それが崩れたのは、米軍統治時代に米国からの食料が沖縄にいち早く流通したことが一因とされる。

「沖縄の伝統食にも豚肉料理がありますが、調理で脂肪分が抜けるように工夫されています。戦後生まれの沖縄の若者らが好んだ米国の食事は主に高脂肪・高カロリーのものでした。それらを食べ続け50歳前後の働き盛りの年代になって、肥満を通じて血管障害を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞で亡くなるケースが急増したのです」

同じ高脂肪・高カロリー食をとっても欧米人は健康への影響が少ないのに対し、日本人やアジア人は体質の違いから健康障害につながりやすいことが分かっている。

沖縄では、飲食を伴う地縁・血縁的な会合「模合」(もあい)をはじめ、各種の会合や飲み会が頻繁にあり、ついつい食べ過ぎれば肥満につながる要因もある。気温も暑いため、少しの距離でも歩かずに車を使う人が多いとされる。

沖縄で起きた事態は、いまや全国どこでも起こり得るものになった。女性にとっての注意点もある。益崎教授の大学院博士課程で社会人大学院生として学ぶ赤嶺ゆかりさんは次のように話す。

「2020年、コロナの感染が拡大した際に狭いところに人が集まると感染リスクが高まるという理由から、当時の玉城デニー知事が模合を控えるよう要請しました。いまは飲食を伴う模合の開催もほぼ復活しています。また、沖縄にはビッフェ形式の店が多く、最近では模合を含めて中高年の女性グループの利用が目立ちます。ビュッフェの店ではサラダ等も提供されますが、肥満症につながりやすい肉料理やパスタ、デザートも食べ放題です」

益崎教授が補足する。 「更年期以降の女性が肥満症になれば、女性ホルモンが減少することで血管等の保護が弱まり、男性と同じように心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります」

マスクが外れても、飲食の量で羽目を外さず、肥満症を予防するために沖縄の事例を胸に刻みたいものだ。

「健活手帖」 2023-03-16 公開
解説
医学博士
益崎 裕章
1989年、京都大学医学部卒。米ハーバード大学医学部招聘博士研究員・客員助教授などを経て2009年、琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授に就任。医学博士。日本肥満学会常務理事。
執筆者
医療ライター
佐々木 正志郎
医療ライター。大手新聞社で約30年間、取材活動に従事して2021年に独立。主な取材対象はがん、生活習慣病、メンタルヘルス、歯科。大学病院の医師から、かかりつけ医まで幅広い取材網を構築し、読者の病気を救う最新情報を発信している。医療系大学院修士課程修了。