肥満 肥満症で死にたくない

肥満症で死にたくない②~内臓脂肪型肥満は男性に多いが女性も閉経以降リスク増

肥満症で死にたくない②~内臓脂肪型肥満は男性に多いが女性も閉経以降リスク増
病気・治療
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もしも、あなたが肥満体型だとしたら、2枚の画像のうち、どちらのタイプだろうか。いずれも40代男性の画像だが全く異なる肥満のタイプだ。

「上の画像は内臓脂肪型肥満で、狭心症と2型糖尿病を合併している肥満症の人。下の画像は健康障害のない皮下脂肪の多い人です」

琉球大学大学院医学研究科の益崎裕章教授が解説する。益崎教授は世界肥満デーの3月4日、日本肥満症予防協会主催のイベントで講演し、その会場で取材に応じた。

体重(キロ)÷身長(センチ)の2乗で算出されるBMI(体格指数)では25を超えると肥満と定義される。「上の画像の人のBMIの値は34、下の人は33で、2人とも超肥満と言わざるを得ない。ただし、画像からは脂肪の付き方に違いがあり、内臓脂肪型肥満(上)は皮下脂肪型肥満(下)よりも、内臓脂肪の割合が多く皮下脂肪が少ないことが見てとれます」と益崎教授。

内臓脂肪型肥満が怖いのは、死亡リスクの高い危険な病気を合併することが多いからだ。「画像の上の人は狭心症と2型糖尿病を合併しています。下の人は病気はなく、健康的な肥満のタイプと言えます」

狭心症は冠動脈の内部が詰まって発症する心筋梗塞の前段階とされる。2型糖尿病は、人工透析につながる糖尿病性腎症など3大合併症につながるほか、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高める。

2人の差は、生活習慣の違いにあるようだ。

「皮下脂肪型肥満の大半は健康的な肥満の人で一般的に、普段からよく体を動かし、食生活や睡眠の質、ストレス管理などを意識的に心掛けている傾向があります。一方、内臓脂肪型肥満の多くは病気を合併する肥満症に発展します。運動習慣がなく、夜ふかし、間食、夜食などの習慣が原因とされています」

内臓脂肪型肥満に関係する生理活性物質、アディポネクチンの性質については、住友病院(大阪市)の名誉院長の松澤佑次氏が大阪大学医学部教授時代に世界で初めて解明した。科学の力で内臓脂肪型肥満が病気を引き起こすリスクの高いことが提示され、これが肥満症の概念の根拠にもなった。

内臓脂肪型肥満は果物にたとえると、リンゴ型のずんぐりむっくりした体型、皮下脂肪型は洋ナシ型でおなかの部分だけがせり出している体型と言われる。

男女に肥満体型の差はあるのだろうか。

「リンゴ型(内臓脂肪型肥満)は男性に多く、これによって心筋梗塞などの心臓血管障害につながる恐れのあることが知られています。女性は洋ナシ型(皮下脂肪型肥満)が多く、心臓血管障害のリスクは比較的少ないことが分かっています」

ただ、女性は安心かと言うとそうでもない。リスクが高まる境目は、更年期だ。

「女性ホルモンは皮下脂肪の蓄積を促進する効果があるので月経が続いている期間は女性の肥満の多くは皮下脂肪型肥満です。閉経後、運動不足や食べ過ぎが続くと内臓脂肪型肥満に転じる場合があり、そうなると男性と同じように心筋梗塞などの致命的な血管病が増加します」と益崎教授は警告する。

更年期以降に、女性は健康的な肥満だった人も、病気を抱える肥満症になるリスクが高まることになる。内臓脂肪型肥満になると、病気が次の病気を呼ぶ負の連鎖に陥る恐れが一気に高まる。

<上写真>
上と下の画像ともにおなかの内部で黒く映っている部分が内臓脂肪(益崎教授提供)

「健活手帖」 2023-03-15 公開
解説
聖マリアンナ医大教授
肥塚 泉
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科特任教授。日本めまい平衡医学会顧問。1981年聖マリアンナ医科大学卒。大阪大学医学部、米ピッツバーク大学医学部などを経て2000年に聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科主任教授に就任。22年から現職。めまいの診断・治療・研究を数多く手掛けている。
執筆者
医療ライター
佐々木 正志郎
医療ライター。大手新聞社で約30年間、取材活動に従事して2021年に独立。主な取材対象はがん、生活習慣病、メンタルヘルス、歯科。大学病院の医師から、かかりつけ医まで幅広い取材網を構築し、読者の病気を救う最新情報を発信している。医療系大学院修士課程修了。