加齢とともに増えるめまいは、骨粗鬆(こつそしょう)症や運動不足などとの関係が深い。加えて、動脈硬化など血管の変性にも、めまい発症のリスクはあるという。
「血流が悪くなると、脳の平衡感覚をコントロールしている脳幹や小脳の働きが悪くなります。メタボリックシンドロームなどで動脈硬化が進行している人は、脳に関係しためまいのリスクが高くなるのです」
こう説明するのは、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授。「めまい外来」で5万人以上の患者を救うと同時に、めまいの正しい知識の普及のために尽力している。
「血管の柔軟性を維持して血流を保つことは、脳卒中予防はもとより、めまい予防でも重要な意味を持つのです。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症でも、一過性のめまいを起こすことがあります」
たとえば、高血圧の人で、血圧が急に上がって下がったときには、めまいを起こしやすい。寒い日に熱い湯船にゆっくり入り、浴槽から出ようと立ち上がった瞬間、めまいを起こすのは典型的なパターンだ。また、糖尿病で高血糖の人も、合併症の一つである自律神経の末梢神経障害(ニューロパチー)によって、起立したときなどに急に血圧が下がって脳への血流が低下したり、薬の作用で急に血糖値が下がる低血糖に陥ったりすると、目の前が急に真っ暗になるようなめまいにつながる。
生活習慣病のめまいを防ぐには、当然のことながら食生活の見直しが欠かせない。太りすぎの人は減量も大切だが、自己流で「断食」のようなことを繰り返すなど無理なダイエットは、さらにめまいにつながるような事態を招きかねない。
「偏ったダイエットでビタミンB1欠乏症になると、脳幹に微小な出血が生じ、細かい眼の振るえ(眼振)や、目の動きに制限が出て、めまいを引き起こすのです」
減量は栄養面を考慮しながら行うことが大切だ。一方、過度のストレスも、メニエール病のような耳の病気に関係しためまいにつながる。ストレス発散が難しい場合も多々あるだろう。
「めまいに悩まれている方は、日常生活のストレスに加えて、めまいによるストレスも感じています。それを和らげる必要があります。『めまい外来』の患者さんには、病気の仕組みを説明して治療を行い、『笑いましょう!』とお話をすると、症状が軽減される方が多い。めまいを治すには、よく笑うことも大切なのです」
気分がよくなってめまいの回数や強度が弱まってきたら、身体を動かすために外出することも重要になる。安静にしすぎると、血液やリンパ液の流れが悪くなることで、めまいを起こしやすくなるという。
「日頃の運動習慣やバランスのよい食事、十分な睡眠はめまい予防に役立ちます。笑いながら楽しく実践しましょう」と肥塚特任教授はアドバイスする。
めまいを防ぐ食生活
□暴飲暴食は止める
□ビタミンやミネラルを意識し、バランスのよい適量の食事を1日3回
□骨粗鬆症予防のため、1日30~60分の日光浴、カルシウムやビタミンDを多く含む牛乳、魚、キノコ類などを食べる
□1日30~60分のウオーキングなど、運動習慣を維持する
□音楽を聴くなどして心を落ち着かせ、リラックする
□めまいがあっても前向きな気持ちを忘れず、お笑い番組などを活用して大笑いする
※肥塚泉監修『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日本書院本社刊)から