脳・脳疾患 「めまい」の正しい対処法

突然襲う「めまい」の正しい対処法⑤~食事や睡眠…笑うことも大切

突然襲う「めまい」の正しい対処法⑤~食事や睡眠…笑うことも大切
病気・治療
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加齢とともに増えるめまいは、骨粗鬆(こつそしょう)症や運動不足などとの関係が深い。加えて、動脈硬化など血管の変性にも、めまい発症のリスクはあるという。

「血流が悪くなると、脳の平衡感覚をコントロールしている脳幹や小脳の働きが悪くなります。メタボリックシンドロームなどで動脈硬化が進行している人は、脳に関係しためまいのリスクが高くなるのです」

こう説明するのは、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授。「めまい外来」で5万人以上の患者を救うと同時に、めまいの正しい知識の普及のために尽力している。

「血管の柔軟性を維持して血流を保つことは、脳卒中予防はもとより、めまい予防でも重要な意味を持つのです。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症でも、一過性のめまいを起こすことがあります」

たとえば、高血圧の人で、血圧が急に上がって下がったときには、めまいを起こしやすい。寒い日に熱い湯船にゆっくり入り、浴槽から出ようと立ち上がった瞬間、めまいを起こすのは典型的なパターンだ。また、糖尿病で高血糖の人も、合併症の一つである自律神経の末梢神経障害(ニューロパチー)によって、起立したときなどに急に血圧が下がって脳への血流が低下したり、薬の作用で急に血糖値が下がる低血糖に陥ったりすると、目の前が急に真っ暗になるようなめまいにつながる。

生活習慣病のめまいを防ぐには、当然のことながら食生活の見直しが欠かせない。太りすぎの人は減量も大切だが、自己流で「断食」のようなことを繰り返すなど無理なダイエットは、さらにめまいにつながるような事態を招きかねない。

「偏ったダイエットでビタミンB1欠乏症になると、脳幹に微小な出血が生じ、細かい眼の振るえ(眼振)や、目の動きに制限が出て、めまいを引き起こすのです」

減量は栄養面を考慮しながら行うことが大切だ。一方、過度のストレスも、メニエール病のような耳の病気に関係しためまいにつながる。ストレス発散が難しい場合も多々あるだろう。

「めまいに悩まれている方は、日常生活のストレスに加えて、めまいによるストレスも感じています。それを和らげる必要があります。『めまい外来』の患者さんには、病気の仕組みを説明して治療を行い、『笑いましょう!』とお話をすると、症状が軽減される方が多い。めまいを治すには、よく笑うことも大切なのです」

気分がよくなってめまいの回数や強度が弱まってきたら、身体を動かすために外出することも重要になる。安静にしすぎると、血液やリンパ液の流れが悪くなることで、めまいを起こしやすくなるという。

「日頃の運動習慣やバランスのよい食事、十分な睡眠はめまい予防に役立ちます。笑いながら楽しく実践しましょう」と肥塚特任教授はアドバイスする。

めまいを防ぐ食生活

□暴飲暴食は止める
□ビタミンやミネラルを意識し、バランスのよい適量の食事を1日3回
□骨粗鬆症予防のため、1日30~60分の日光浴、カルシウムやビタミンDを多く含む牛乳、魚、キノコ類などを食べる
□1日30~60分のウオーキングなど、運動習慣を維持する
□音楽を聴くなどして心を落ち着かせ、リラックする
□めまいがあっても前向きな気持ちを忘れず、お笑い番組などを活用して大笑いする

※肥塚泉監修『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日本書院本社刊)から

「健活手帖」 2023-03-11 公開
解説
聖マリアンナ医大教授
肥塚 泉
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科特任教授。日本めまい平衡医学会顧問。1981年聖マリアンナ医科大学卒。大阪大学医学部、米ピッツバーク大学医学部などを経て2000年に聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科主任教授に就任。22年から現職。めまいの診断・治療・研究を数多く手掛けている。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。