脳・脳疾患 「めまい」の正しい対処法

突然襲う「めまい」の正しい対処法④~耳の症状伴う人は「寝返り体操」が有効

突然襲う「めまい」の正しい対処法④~耳の症状伴う人は「寝返り体操」が有効
病気・治療
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めまいは、脳や耳の障害、ホルモン・自律神経の乱れに関係する。耳が原因のめまいで最も多いのは、良性発作性頭位めまい症である。この他にも、メニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎といった耳の病気でも、めまいは起こる。

「耳の病気で起こっているめまいは、リハビリや体操で改善することが可能です。特に良性発作性頭位めまい症は『寝返り体操』が有効です」

こう話す聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授は、「めまい外来」で5万人以上の患者を診断・治療し、治療法としてリハビリや体操を普及させてきた。

「良性発作性頭位めまい症であれば、私たちの『めまい外来』の耳石置換法で約7割の方は治ります。しかし、首や腰にトラブルを抱えていると、耳石置換法の施行が困難なことがあります。そこで、誰もが簡単にできる寝返り体操を考えたのです」

めまいといっても、原因によって症状は異なる。良性発作性頭位めまい症は、頭を動かすとめまいが悪化するが、前庭神経炎は、頭を動かしても症状の強さはあまり変わらない。一方、めまいを伴う突発性難聴やメニエール病は、「聞こえにくい」「耳鳴りがする」「耳が詰まった感じがする」など、聴覚の症状が伴う。


「耳の症状が伴うめまいでは、急性期には薬による治療が有効ですが、急性期が過ぎたらなるべく早めにリハビリを行うのが基本です。耳に障害が残っても、リハビリによって脳が誤った信号を補正してくれるからです。リハビリはとても重要といえます」

耳のめまいのリハビリや体操はいろいろあるが、「寝返り体操」の方法は別項のとおり。

良性発作性頭位めまい症の人は、目を閉じていても開けていてもOK。メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎の人は、明るい部屋で目を開けて行うようにしよう。

「メニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎の方には、『目の前の指標を見ながら頭部を左右や上下に振る方法』などのリハビリが、より有効です。『日本めまい平衡医学会』(日本めまい平衡医学会で検索)では、全国のめまい相談医を紹介しています。めまいの診断やご自身に合ったリハビリ方法などについて、ご相談いただけます」

耳から起こるめまいの種類

【良性発作性頭位めまい症】
頭を動かしたときにめまいが起こるが、30秒~1分程度で治まる(めまいが1分以上続くタイプもある)。耳石器からはがれた耳石が、平衡感覚をつかさどる三半規管に紛れ込むのが原因

【メニエール病】
回転性めまいを何度も繰り返し、難聴や耳鳴り、耳が詰まった感じなど聴覚の症状が伴う。耳の奥の内耳全体が水膨れのようになるのが原因

【突発性難聴】
突然片方の耳が聞こえなくなり、めまいが起こる場合がある。発症原因は不明だが、過労やストレス、ウイルス感染などが推測されている


【前庭神経炎】
三半規管や耳石器と脳をつなぐ前庭神経に、病変が生じて発症する。ウイルス感染や血流障害が原因と考えられている。「大地震が起こったような」とても強い回転性のめまいが、断続的に数日間に渡って続くのが特徴。20代~30代に発症しやすい

 

寝返り体操


①布団の上に仰向けに寝て10秒数える
②寝返りを打つように体ごと左に傾けて、10秒数える
③再び仰向けに寝て10秒数える
③寝返りを打つように、体ごと右に傾けて10秒数える

※起床時と就寝時の1日2回行う。①の動作で、左に寝返ったときにめまいがひどいときには、右から始めてもよい。腰が痛む人は頭だけを回す形で行うとよい

※肥塚泉著『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版刊)から

「健活手帖」 2023-03-10 公開
解説
聖マリアンナ医大教授
肥塚 泉
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科特任教授。日本めまい平衡医学会顧問。1981年聖マリアンナ医科大学卒。大阪大学医学部、米ピッツバーク大学医学部などを経て2000年に聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科主任教授に就任。22年から現職。めまいの診断・治療・研究を数多く手掛けている。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。