めまいは、脳や耳の障害、ホルモン・自律神経の乱れに関係する。耳が原因のめまいで最も多いのは、良性発作性頭位めまい症である。この他にも、メニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎といった耳の病気でも、めまいは起こる。
「耳の病気で起こっているめまいは、リハビリや体操で改善することが可能です。特に良性発作性頭位めまい症は『寝返り体操』が有効です」
こう話す聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授は、「めまい外来」で5万人以上の患者を診断・治療し、治療法としてリハビリや体操を普及させてきた。
「良性発作性頭位めまい症であれば、私たちの『めまい外来』の耳石置換法で約7割の方は治ります。しかし、首や腰にトラブルを抱えていると、耳石置換法の施行が困難なことがあります。そこで、誰もが簡単にできる寝返り体操を考えたのです」
めまいといっても、原因によって症状は異なる。良性発作性頭位めまい症は、頭を動かすとめまいが悪化するが、前庭神経炎は、頭を動かしても症状の強さはあまり変わらない。一方、めまいを伴う突発性難聴やメニエール病は、「聞こえにくい」「耳鳴りがする」「耳が詰まった感じがする」など、聴覚の症状が伴う。
「耳の症状が伴うめまいでは、急性期には薬による治療が有効ですが、急性期が過ぎたらなるべく早めにリハビリを行うのが基本です。耳に障害が残っても、リハビリによって脳が誤った信号を補正してくれるからです。リハビリはとても重要といえます」
耳のめまいのリハビリや体操はいろいろあるが、「寝返り体操」の方法は別項のとおり。
良性発作性頭位めまい症の人は、目を閉じていても開けていてもOK。メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎の人は、明るい部屋で目を開けて行うようにしよう。
「メニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎の方には、『目の前の指標を見ながら頭部を左右や上下に振る方法』などのリハビリが、より有効です。『日本めまい平衡医学会』(日本めまい平衡医学会で検索)では、全国のめまい相談医を紹介しています。めまいの診断やご自身に合ったリハビリ方法などについて、ご相談いただけます」
耳から起こるめまいの種類
【良性発作性頭位めまい症】
頭を動かしたときにめまいが起こるが、30秒~1分程度で治まる(めまいが1分以上続くタイプもある)。耳石器からはがれた耳石が、平衡感覚をつかさどる三半規管に紛れ込むのが原因
【メニエール病】
回転性めまいを何度も繰り返し、難聴や耳鳴り、耳が詰まった感じなど聴覚の症状が伴う。耳の奥の内耳全体が水膨れのようになるのが原因
【突発性難聴】
突然片方の耳が聞こえなくなり、めまいが起こる場合がある。発症原因は不明だが、過労やストレス、ウイルス感染などが推測されている
【前庭神経炎】
三半規管や耳石器と脳をつなぐ前庭神経に、病変が生じて発症する。ウイルス感染や血流障害が原因と考えられている。「大地震が起こったような」とても強い回転性のめまいが、断続的に数日間に渡って続くのが特徴。20代~30代に発症しやすい
寝返り体操
①布団の上に仰向けに寝て10秒数える
②寝返りを打つように体ごと左に傾けて、10秒数える
③再び仰向けに寝て10秒数える
③寝返りを打つように、体ごと右に傾けて10秒数える
※起床時と就寝時の1日2回行う。①の動作で、左に寝返ったときにめまいがひどいときには、右から始めてもよい。腰が痛む人は頭だけを回す形で行うとよい
※肥塚泉著『めまいは寝転がり体操で治る』(マキノ出版刊)から