脳・脳疾患 「めまい」の正しい対処法

突然襲う「めまい」の正しい対処法①~主に耳の障害、脳の病気、ホルモン・自律神経系の乱れの3つ

突然襲う「めまい」の正しい対処法①~主に耳の障害、脳の病気、ホルモン・自律神経系の乱れの3つ
病気・治療
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突然襲ってくる「めまい」は、つらい。加齢に伴い起こりやすいが、原因を知り正しく対処すれば、自分で治せるめまいも多いという。これまで5万人以上のめまい患者を救ってきた聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授に話を聞いた。

めまいはある日突然現れる。朝起きて布団から出ようとした瞬間、部屋あるいは自分自身がグルグルと回って気分が悪くなる。あるいは、立ち上がった瞬間、目の前が真っ暗になる。身に覚えのないめまいは、「脳の病気かもしれない」と考える人もいるだろう。

「めまいの原因は、主に耳の障害、脳の病気、ホルモン・自律神経系の乱れの3つにわけられます。脳が原因のめまいは1~2割程度で、めまい以外に、ろれつが回らないなどの症状が伴うことが多いです」と、肥塚特任教授は説明する。

脳梗塞や脳出血などで脳の一部がダメージを受けると、平衡感覚などをつかさどる耳の感覚器から伝わる情報がうまく処理できなくなり、めまいにつながる。同時に、言語や歩行などの運動に関わる脳の神経細胞もダメージを受けるため、めまい以外の言語障害や歩行障害などの症状も伴いやすいのだ。

「脳が原因のめまいの人は、『パ・タ・カ』という言葉がはっきり発音できなくなることが多い。手足の力が入らない、右足と左足の温度の感じ方が違うなど、めまい以外の症状が伴う場合は、救急車を呼ぶなど早めに対処してください」

一方、立ち上がったときに急に真っ暗になり、立ちくらみのような状態になるめまいは、自律神経の乱れで生じやすい。血流が悪くなって、脳への血流不足が原因で起こるという。

たとえば、思春期は、身長が急に伸びるため、起き上がったときや、急に立ち上がった時に高い位置にある脳への血流が不足になりやすく、立ちくらみが生じるという。

「中高年の方は、糖尿病の合併症のひとつである自律神経障害が生じると、血圧の調節がうまくいかなくなり、起き上がったときや、急に立ち上がったときに脳への血流が不足しやすくなります」

血圧の調節は自律神経が担う。急に立ち上がったときには、重力によって血液が足の方へ下がるが、自律神経の働きで血圧を調整して血液が脳へ届くようにしている。しかし、自律神経の働きが乱れると、血圧の調節がうまくいかなくなる。そのため、立ち上がったときに血圧が急に下がる起立性低血圧を起こし、脳が血流不足に陥るのだ。

「めまいのおよそ7割は耳に関係していますが、自己判断せずに原因を突き止めることが大切です。『日本めまい平衡医学会』では、全国のめまい相談医を紹介していますので、ご活用ください」

スマホやタブレットなどで検索ワード「日本めまい平衡医学会」で調べると、全国の最新のめまい相談医一覧などが見られる。

めまいの原因となる3つの部位

①耳から生じるめまい…耳の平衡感覚を司る部位に障害が起こるとめまいにつながる。良性発作性頭位めまい症が代表的な病気

②脳から生じるめまい…脳梗塞や脳出血など脳の病気によってめまいが起こる。ろれつが回らない、手足の力が極端に落ちるなど、めまい以外の症状を伴うのが一般的といえる

③ホルモンの変調や自律神経の失調からくるめまい…ホルモンの低下をきっかけに起こる良性発作性頭位めまい症、自律神経の乱れにより、急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になる起立性低血圧

※肥塚泉監修『図解 専門医が教える! めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日本書院本社刊)から

「健活手帖」 2023-03-07 公開
解説
聖マリアンナ医大教授
肥塚 泉
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科特任教授。日本めまい平衡医学会顧問。1981年聖マリアンナ医科大学卒。大阪大学医学部、米ピッツバーク大学医学部などを経て2000年に聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科主任教授に就任。22年から現職。めまいの診断・治療・研究を数多く手掛けている。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。