頭痛 「頭痛」の正しい対処法

専門医が教える「頭痛」の正しい対処法⑤~頭痛の誘因を知って生活習慣を改善する

専門医が教える「頭痛」の正しい対処法⑤~頭痛の誘因を知って生活習慣を改善する
病気・治療
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国内の片頭痛患者は約840万人、緊張型頭痛は約2000万人と推計され、国民のおよそ4人に1人は頭痛持ちといわれる。だからといって、市販の鎮痛薬の使い方を誤れば、「薬剤の使用過多による頭痛」(薬物乱用頭痛)に陥り、さらに頭痛が悪化する事態も招きかねない。では、頭痛を退けるにはどうすればよいのか。

「片頭痛は新たな予防薬も登場し、頭痛のコントロールが行いやすくなっています。ぜひ日本頭痛学会の専門医による『頭痛外来』(「日本頭痛学会」で検索)を受診してください」

こう話すのは、湘南慶育病院(神奈川県藤沢市)の鈴木則宏院長。さまざまな頭痛患者を長年救い続けている。

「緊張型頭痛は市販の頭痛薬が有効ですが、薬物乱用頭痛を防ぐためにも、頭痛が頻繁に起こるようならば、医療機関を受診しましょう。また、ご自身の頭痛の特徴を知り、生活習慣の中で発症リスクを避けることも重要です」

たとえば、カーテンを開けて朝日を浴びると頭痛が始まる人は、サングラスをかけるのも予防の一助になる。屋外の道路工事などの騒音が引き金になるときには耳栓を。強い匂いがダメな人は香水などを避けるなど自身に合った予防策を考えよう。空腹を感じて頭痛が起こる場合は、小腹を満たすおやつや食事時間の前倒しも必要になる。

人それぞれに発症しやすいパターンがある。

「頭痛の誘因はさまざまですが、誘因を知って避ければ予防につながります。頭痛を発症していない人も、ストレス軽減や運動習慣などが予防に役立ちます」

緊張型頭痛はストレスとの関係が深い。仕事のノルマに押しつぶされそうになりながらの長時間のパソコン作業で、夕方頃から頭痛に見舞われやすい。慢性化を防ぐには、リラックスとストレッチなどの運動が役立つ。帰宅後に38~40°Cのぬるめの湯による入浴や、仕事や家事での1時間ごとに立ち上がりなど、軽く身体を動かすことを考えよう。

「ストレッチで筋肉をほぐして血流をよくすることは、緊張型頭痛だけでなく片頭痛の予防でも有効です。同じ姿勢のままでいることがよくありません。ただし、片頭痛の方は頭痛が起きてしまったら、身体を動かすと症状が悪化するので安静にしましょう」

頭痛を退ける鈴木院長お勧めの方法(別項)も参考に。適切な対処で慢性頭痛の痛みを軽減することは可能だ。

「これまで感じたことのない頭痛が始まったら、医療機関を早めに受診してください。適切に対処することで、慢性頭痛の改善や予防につなげていただきたいと思います」と鈴木院長はアドバイスする。

頭痛を退ける生活習慣

□休日でも決まった時間に起きるなど、生活のリズムを乱さないようにする
□強いストレスを感じたときには、少しの時間も趣味に没頭するなどストレス発散を心掛ける
□強い日差しを避けるためにサングラスを活用するなど太陽光に注意する
□天気予報をチェックし、雨など天気が悪い日はゆとりのあるスケジュールを心掛ける
□バランスのよい食事を1日3回、アルコールは飲み過ぎない
□長時間のデスクワークでは、1時間に1回は立ち上がるなど身体を動かすことを意識する

「健活手帖」 2023-03-26 公開
解説
湘南慶育病院院長
鈴木 則宏
湘南慶育病院院長。慶應義塾大学名誉教授。1977年、慶應義塾大学医学部卒。スウェーデン・ルンド大学医学部留学、北里大学医学部診療教授などを経て、2004年、慶應義塾大学医学部教授に就任。頭痛、パーキンソン病、脳血管疾患を専門とし、同大病院副院長などを経て2018年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。