頭痛 脳・脳疾患 「頭痛」の正しい対処法

専門医が教える「頭痛」の正しい対処法①~周囲に理解されにくい片頭痛のつらさ

専門医が教える「頭痛」の正しい対処法①~周囲に理解されにくい片頭痛のつらさ
病気・治療
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突然襲ってくる頭痛に悩まされた経験は、だれにでもあるだろう。日常生活に支障が生じることもある。さらに重病が隠れているおそれも。そんな頭痛の正しい対処法について、「頭痛外来」で多くの患者を救い続けている湘南慶育病院(神奈川県藤沢市)の鈴木則宏院長に話を聞く。

「頭痛で人間関係が悪くなってしまった」。そんな症状を引き起こす片頭痛をご存じだろうか。MRI(磁気共鳴画像法)などの検査で脳に異常はないものの、頭の片側、もしくは両側に激痛を引き起こす。それが、4時間から数日も続き、何度も繰り返される。周囲を心配させ、たかが頭痛では、すまなくなる。

「一般に片頭痛というと、こめかみが少し痛むイメージがあるでしょう。しかし、本来の片頭痛は重症のことが多い。イメージと実際の症状の解離で、周囲の方に理解されにくい面があるのです」と鈴木則宏院長は指摘する。

片頭痛は、国内で約840万人と推計されている。ホルモンや自律神経の調整に関わる脳の視床下部が関係し、脳の中の三叉神経(さんさしんけい)に悪影響を及ぼし、片頭痛につながると考えられている。鈴木院長によれば、片頭痛ならではの特徴的な症状がある(別項)という。

「片頭痛の症状は激烈です。身体を動かすと悪化するため、患者さんは身体を動かすことができなくなります。しかし、その状態を周囲の方々になかなか理解してもらえず、つらい思いをされている方は少なくないのです」

片頭痛と無縁の人は、「頭が痛くても我慢できるでしょう」と思うことがあるだろう。しかし、片頭痛で重症の人は、身体を動かすと痛みが一層激しくなるため、身体を動かすことが難しい。吐き気なども伴って、外出は困難となる。

「片頭痛は緊張が緩んだときに起こりやすいので、週末の遊びもキャンセルせざるをえません。また、寝すぎも片頭痛の引き金になるため、週明けに急な欠勤もせざるをえないことがあるのです。そんなことが続き、人間関係の悪化を経験している人がいるのです」

バリバリ働く平日には片頭痛は起こらないのに、週末にかぎって起こると、「またか…」と家族や友人は思うだろう。何度もドタキャンを繰り返されると、「本当は一緒に遊びに行きたくないのでは?」などと疑いの目を向けられることもある。

一方、多忙な平日の疲れをとるため寝すぎると、週明けの出勤時に片頭痛に見舞われやすい。週明けの欠勤を繰り返すうちに職場の人関係が悪化するようなことも起こる。

「片頭痛は女性に多く、思春期から更年期を過ぎるまで、長い期間苦しめられている人もいます。人間関係のみならず、優秀な方の職場での生産性も低下し、社会にとっても大きな損失をもたらすのです」

片頭痛には、一昨年来、新たな治療薬が登場し、症状を抑制しやすくなっているという。「まず受診」が肝心だ。

片頭痛の主な症状

□頭の片側、もしくは両側に激しい痛みがある
□ドクンドクンといった拍動の痛みがある
□身体を動かすと痛みが増す
□頭痛に加えて吐き気と嘔吐が伴うこともある
□光や音でも痛みが増す
□前兆のある片頭痛では、頭痛が起こる前に目の前にチカチカと光が見える閃輝暗点(せんきあんてん)が生じる
□痛みは4時間程度から3日間続くこともある

「健活手帖」 2023-03-21 公開
解説
湘南慶育病院院長
鈴木 則宏
湘南慶育病院院長。慶應義塾大学名誉教授。1977年、慶應義塾大学医学部卒。スウェーデン・ルンド大学医学部留学、北里大学医学部診療教授などを経て、2004年、慶應義塾大学医学部教授に就任。頭痛、パーキンソン病、脳血管疾患を専門とし、同大病院副院長などを経て2018年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。