認知症を予防して健康寿命を延ばすには、学生時代のような勉強法は不向きだ。「意味記憶」など大人の脳の得意とする方法で取り組むことが大切になる。意味記憶というのは、たとえば、1600年に「関ヶ原の戦い」と、年代と戦の名称で記憶するのではなく、「なぜ関ヶ原の戦いは起こったのか」と、理解することで年代と名称を記憶する方法だ。
「大人の脳は、無意味な丸暗記は苦手なので、『覚えよう』ではなく、『理解しよう』といった学習法が重要になります。もちろん、脳の仕組みには個人差があります。自分の得意な方法を活かして、脳を活性化させましょう」
こう話す加藤プラチナクリニック(東京都港区)の加藤俊徳院長=写真=は、脳内科医として独自の脳画像診断法を開発し、1万人以上の患者を診断・治療している。誰もが脳の学習能力を上げる方法を見出し、書著『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)などで紹介している。
■“脳番地”連携を強化する
「脳の神経細胞が集まり、同じような働きをする部分を“脳番地”と名づけました。代表的な脳番地は、8つの系統にわかれて働いています。この8つの脳番地の連携を強化することで、脳はいくつになっても成長し続けるのです」
8つの脳番地は、意味記憶のような「理解系」、話したり伝えたりする「伝達系」、体を動かすことに関する「運動系」などに分けられている。いずれの番地も、左脳や右脳にまたがる。加えて、脳の前方には主に情報を発信する働きの脳番地があり、脳の後方には情報を取り入れて処理する脳番地が位置する。
「左右・前後の脳番地の連携を強化するには、3つ以上の脳番地を動かすことが大切になります。脳番地の『思考系・理解系・記憶系』を巻き込みながら勉強すれば、一気に脳全体が活性化します」
脳番地の思考系・理解系・記憶系の動かし方は、たとえば、「これはなんだろう?」と思い、調べて理由を理解することで、その内容を記憶するのだ。
■運動系脳番地も活用
ただし、「考え理解し記憶にとどめる」といっても、興味がないことに脳は反応しない。脳を活性化させるために学習に取り組んでも、「つまらない」「苦痛」と感じていると、脳は動かない。
「物を見たり、音を聞いたりしたときに、活性化する視覚系脳番地や聴覚系脳番地は、興味があることや好きなものを選り好む選択性があります。つまらない方法の勉強では、脳は活性化せず、長期記憶にもとどまりにくいのです」
苦手意識の強い参考書の頁を開くと、5分も断たないうちにまぶたが重くなる。が、自分の興味を持つ本は、寝不足のときに読んでも眠くはならず、むしろ眠気が吹き飛ぶようなことも起こる。
「いかに楽しく学習するか。頭がボーッとしたときには、運動系脳番地を活性化させるために、身体を動かしましょう。運動系脳番地は、思考系・理解系・記憶系の脳番地と連動しているので、身体を動かすと自然に活性化し、学習の効率化につながるのです」