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認知症を予防する~“脳番地”を動かす音読暗唱法

認知症を予防する~“脳番地”を動かす音読暗唱法
予防・健康
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脳は得意分野ごとに神経細胞が集まって“脳番地”を形成している。脳内科医の加藤プラチナクリニック(東京都港区)・加藤俊徳院長に脳の強化法を聞いた。

 

■見ない、聞かない、動かないはダメ


見る(視覚系脳番地)、聞く(聴覚系脳番地)、身体を動かす(運動系脳番地)―それぞれが活性化することで、思考系・理解系・記憶系の高次機能の脳番地が連動する。

「認知症の脳では、アミロイドβタンパクが脳に沈着して、さらに、記憶系脳番地にタウタンパクが沈着し、脳の神経細胞が減少すると症状が強くなってきます。見ない、聞かない、動かない生活は、認知症のリスクを上げるのです」

認知症予防やフレイル(心身の虚弱)の予防は、「食事、運動、社会参加」が3つの柱。社会参加では、外出して身体を動かし、新しい場所や資料などを見て、初めて出会う人の声を聞くなどするだろう。すると、自然に脳の高次機能が動き出し、事象について考え理解し、記憶にとどめるようなことにつながる可能性があるのだ。

 

■毎日音読→暗唱で脳を鍛える

 

「運動は身体を動かすだけではありません。口腔筋の強化で『オーラルフレイル』を予防することも、高次機能の活性化に役立ちます。人とのコミュニケーションも大切ですし、学習でも口腔筋を上手く使うことで効率が上がるのです」

加藤院長が勧める学習法は、テキストの「音読」。黙読よりも音読の方が記憶にとどまりやすいという。見た方が覚えやすい人は、書きながら声に出して読む、あるいは、書き出したテキストの文章をじっくり見ながら声に出して読むとよいそうだ。

「一気に詰め込むような勉強法は、大人の脳に向いていません。3行暗唱して、暗記したひとつの文章を書いてみる。単純な作業に見えますが、毎日の繰り返しが、脳の活性化で大いに役立つののです」

大人の脳は、苦手なことに早く疲れを感じやすいため、勉強は短時間にとどめるのがコツだ。

①最初の10分でテキストに軽く目を通す
②次の10~20分で音読
③次の10分で小さいテスト
④最後の10分で答え合わせ

このようなパターンが大人の脳にとって活性化しやすいという。

 

■一生脳を成長させる

 

「大人の脳は使い方次第で100歳を超えても成長させることが可能です。一生を通して効率よく学習し、ぜひ脳を活性化し続けてください」

加藤院長は、誰もが認知症を予防し健康寿命の延伸につながるように、2006年に「脳の学校」を設立した。子どもたちには、大人になっても脳が成長し続ける仕組みを伝授。さらに、年代ごと、あるいは、個人の脳の状態に合わせた脳の成長のため、啓蒙活動に力を注いでいる。

「全ての人に、生涯を通して頭がよくなり続けてほしいのです。脳は仕組みとして、いくつになっても学習し続けることを要求しています。興味がわいたことの知識をもっと増やしましょう」

勉強と身構えることなく、たとえばサッカーや野球でも、興味のあることの知識を深めることで、脳は活性化する。

「脳はつまらないと思ったら働きません。毎日楽しく脳を活性化していただきたいと思います」

「健活手帖」 2023-03-15 公開
解説
脳内科医、医学博士
加藤 俊徳
脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳科学音読法の提唱者。『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など著書多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。