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【ベストセラー健康本】世代超えた精神科医2人のトーク『不安と折り合いをつけてうまく老いる生き方』(中村恒子、奥田弘美著)

公開日:2023-04-01
更新日:2023-04-08
【ベストセラー健康本】世代超えた精神科医2人のトーク『不安と折り合いをつけてうまく老いる生き方』(中村恒子、奥田弘美著)
予防・健康
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人生100年時代。後半戦をよりよく生きるコツは、不安の解消法ではなく「折り合いの付け方」にある。そんな知恵を集めた1冊が『不安と折り合いをつけてうまく老いる生き方』(すばる舎、1320円)だ。

92歳の中村恒子さんと、54歳の奥田弘美さん―世代を超えた精神科医2人が「老い」について真剣対談を繰り広げる本書は、20万部を突破した『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』の待望の続編である。

中村さんは、終戦の2カ月前に医師になるために広島県尾道市から単身大阪に出て、混乱の時代に医師になった。2人の子を育て、2019年(90歳)までフルタイムの外来・病棟診療を続けてきた。奥田さんは内科医を経て、中村さんと出会い、精神科医に転身している。

師弟関係にある2人の対談は、達人と入門者の哲学的問答のように読み物としても実に面白い。

たとえば―【いつまでも若くいられる時代だからこそ、老いるメリットを数えてみる】の項。

奥田「体は50代になるとたるんでくるし、顔にはシワも出てくるし。そんな状態で服や化粧で表面を取り繕っても、若い頃と違ってそんなに効果がないというか、むなしいというか…」

中村「わぁ、すごい時代になったもんやなぁ。私の頃は、結婚したら、もう『おばさん』扱いで、気楽なものやったわ(笑)。50代だと、もうおばさんどころか、おばあさん扱いされていたわな。せやから化粧も服も、他人さんに不快感を与えん程度で良し。ファッションも、流行なんか気にしないで、適当やったな」

【気力・体力の右肩下がりも、悪くない。欲がなくなり、楽に生きられるようになる】の項。

中村「老人になると役割だけじゃなく、自分を縛ってきた『欲』からも、どんどん解放されるよ。面白いもので、ええ塩梅に気力や体力が落ちてくるから、あれしたい、これしたいって気持ちがだんだん少なくなっていくんやな。仕事でも私生活でも、脇役・黒子でけっこう、そっちの方が楽やし!ってな感じになってくる」

奥田「たしかに50歳を過ぎたあたりから、物欲も穏やかに減ってきますし、仕事や趣味で自己実現しなきゃ、とか、人生を充実させなきゃ、といった感覚も、どんどん薄まっていきますね」

このように本書では、「気楽になる」「性別の縛りや人の目から解放される」「人を動かそう変えようとするから辛くなる」「相手に要望が多すぎると辛くなる」「友達が多いほうがいいというのは思い込み」など、年をとることの数々のメリットや不安との折り合い方を、テンポの良い会話により提示している。

老いや孤独、人間関係、終活などをテーマに繰り広げられる現実的な会話には、深く頷いたり、ほっこりしたり、思わず膝を打ったり。気づいたときには、心の荷物がふと軽くなっている。

心と体を健やかに整えるための睡眠の基本

①できるだけ1日6~7時間以上(高齢者は5~6時間程度)の連続睡眠を
②どうしても睡眠がとれない日は、翌日早く帰って寝るなど「睡眠の借金」を早めに返す
③休日は1週間分の睡眠の借金を返すために2~3時間寝だめするのは構わないが、生体リズムが狂わないよう午前中には起きる

「健活手帖」 2023-03-17 公開
執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。