がん 医師・名医 胃・腸

大腸がんの名医~がん研究会有明病院・消化器化学療法科副部長、篠崎英司さん

公開日:2023-04-01
更新日:2023-04-05
大腸がんの名医~がん研究会有明病院・消化器化学療法科副部長、篠崎英司さん
病気・治療
文字サイズ

日本のがん治療の最高峰の1つ、がん研有明病院消化器化学療法科副部長の篠崎英司医師を紹介する。

がん治療をやりたくて、大学を卒業後は消化器外科医としてデビュー。しかしその後、「免疫」の仕組みに興味が湧き、その研究のために現在所属するがん研の化学療法チームに移ったという変わり種だ。

篠崎医師がいま取り組んでいるのが、「シェアード・デイジション・メイキング」。日本語にすると、科学的根拠を患者と医師が共有したうえで治療方針を考えていくこと―となる。

「術後の患者から採取した血液を使ってその人のがんの遺伝子異常を検査(リキッドバイオプシー)して、その結果をもとに再発の確率を判断。再発のリスクを患者と共有し治療法を決定する。こうした個別性の高い治療の仕組みを確立し、臨床に落とし込んでいくことが目標であり、ライフワークでもあります」

まさに“個別化医療”の最先端だが、じつはもう1つ、篠崎医師が先頭に立つ研究が進んでいるのだ。

「3D培養法」と呼ばれるもので、従来はマウスなどの生体を利用して行ってきたがん細胞の検証を生体外で人工的に再現させ、そこで抗がん剤などの感受性を調べるシステムの開発だ。

「実験動物を使うことなく、その患者の生体により近い組織を作り出すことで、精度の高い治療選択、特に分子標的薬の水先案内人の役割を果たせると考えています」と語る篠崎医師。たしかにこれが臨床で実装されると、がん治療の姿が大きく変わることになるはずだ。

人類の英知の結晶であるがん治療。その先頭に立つ篠崎医師の研究が医療消費者に役立つ日は、決して遠い将来のことではない。

篠崎英司(しのざき・えいじ)


がん研究会有明病院消化器化学療法科副部長。1967年東京都生まれ。筑波大学医学医療系医学類卒業。同大学院修了。同大学病院と関連病院で外科研修。大学院修了後、癌研究会附属病院(現・がん研有明病院)消化器化学療法科勤務を経て副部長。日本臨床腫瘍学会指導医、同がん薬物療法専門医ほか。医学博士。趣味はワインとコーヒー。

「健活手帖」 2023-03-26 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。