13年目の3・11。東日本大震災被災地復興の様子を今年もテレビで見ました。
震災当時、子供だった人が立派な若者となって、故郷の未来について語る姿がなんとも頼もしい。われわれは3・11を忘れてはならない。ずっと応援し続けなければ…と思っていた矢先に、この若者の訃報を知りました。
2023年3月10日。バレーボール東京五輪代表でセッターとして活躍、V1男子の東レアローズに所属していた藤井直伸選手が亡くなりました。享年31。昨年2月に、自身のSNSで胃がんのステージ4と公表し、闘病中でした。同じバレーボール選手の佐藤美弥さんと結婚したのは2021年秋。なぜ神様はこんな試練を与えるのか。
■目の不調から、がん転移が判明
40歳以下で罹患(りかん)した場合、若年性胃がんと呼ばれます。中高年よりも進行が早く、また、無症状で進行し、検査でも見つかりにくい「スキルス胃がん」が、若年性では多いことがわかっています。藤井選手は2021年末より目の不調を感じたことから検査に行き、がんが転移していることが判明したようです。
「簡単に克服できる病気ではありませんが、僕には共に戦ってくれるかげがえのない仲間、温かく心強い家族、たくさんの応援してくださるみなさんがいます!!みんなの莫大(ばくだい)なエネルギーを力に変えて、必ず元気になります!!」(本人のインスタグラムより)
藤井選手は、宮城県石巻市の出身。順天堂大学1年のときに東日本大震災が起き、ご実家が津波で流されました。
漁業関係の父親が職を失ったこともあり、家族思いの彼は自分だけが好きなことを続けていいのかと、一度はバレーを諦めようとしました。しかし大学が救済措置を取ってくれ、周囲が手を差し伸べてくれたおかげで続けられたといいます。2021年、震災11年目。東京五輪の延期が決まったときのことについて、インタビューではこんなふうに語っていました。
■永遠に消えぬ「利他のこころ」
「世の中が大変な時期で、人の命以上に大切なものはない。どんな状況であろうとこれからも自分がバレーボールを続け、バレーボール選手であり続ける限り、宮城を背負って、宮城、東北の代表として頑張らないといけない、という気持ちは、以前よりずっと強くなりました」
強い気持ちで病とも向き合っていたはずです。
「自分が頑張ることが、誰かの力になっているかもしれない、と思えば、またもっと頑張れる」
東北のために、バレーボールのために。藤井選手の「利他のこころ」は永遠に消えません。