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スマホが押せない!深刻な手指の痛みと対策①~人さし指の第一関節の腫れ骨が変形する「へバーデン結節」「ブシャール結節」

スマホが押せない!深刻な手指の痛みと対策①~人さし指の第一関節の腫れ骨が変形する「へバーデン結節」「ブシャール結節」
病気・治療
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年を重ねるにつれ手は痛みやすい。指の痛みで夜も眠れず、うまく物をつかむことが難しくなることがある。パソコンが叩けなかったり、スマートフォンが押せなかったりすることも。手外科専門医で数多くの患者を救うNTT東日本関東病院整形外科の高本康史医長に対策を聞いた。

朝起きてスマホを見ようとして、指が触れた瞬間痛みが走ったことはないだろうか。

手を見ると、利き手の人さし指の第一関節が赤く腫れぼったい。ぶつけた記憶もないのに、このような症状を引き起こすのが「へバーデン結節」。患者数が多い手の病気のひとつだ。

「へバーデン結節は、指先のDIP関節(第1関節)が変形する病気です。一般的に、膝が変形する変形性膝関節症をご存じの方はいるでしょう。へバーデン結節は、変形性膝関節症のように、指のDIP関節が変形するのが特徴です」と、高本康史医長は説明する。

指の先には末節骨(まっせつこつ)、次に中節骨(ちゅうせつこつ)がある。その間のDIP関節によって指の先端は曲がる仕組みになっている。関節には、骨と骨の間のクッションの役割を果たす軟骨や、軟骨の滑りをよくする関節液(かんせつえき)、関節を安定させる靱帯など、複雑な構造で成り立つ。高本医長が説明を続ける。

「へバーデン結節では、軟骨がすり減り靱帯が緩み、骨同士がぶつかるようになって痛みを引き起こします。人さし指に限らず、どの指にも生じます。骨が徐々に変形すると、見た目にも指の変形がわかるようになります」

骨が変形すると、痛みに加えて可動域が狭くなり、手を握ることが難しくなる。物を持ったり、料理をしたり、パソコンやスマホの操作をすれば激痛に見舞われる。

「閉経後の女性に発症しやすいので、女性ホルモンとの関係が指摘されていますが、はっきりとした原因はわかっていません。ピアニストやマッサージ師の方など、長年、手をよく使う仕事をしている人にも多いです」

一方、第2関節(PIP関節)が変形する「ブシャール結節」という病気もある。へバーデン結節と同様だが、第2関節に痛みや腫れ、変形を引き起こす。

いずれにしても治療では、関節の負荷を軽減するためのテーピングや消炎鎮痛薬による痛みの軽減が行われる。関節の変形がひどい人には手術も実施される。

「手術には、関節を固定し、骨同士がぶつからないようにする関節固定術と、人工的な関節に置き換える人工関節置換術(別項)があります。治療法は病態に合わせて選択します。また、別の病気が潜んでいることもあるので、手指に異変を感じたら早めに受診しましょう」

へバーデン結節やブシャール結節以外にも、手の痛みを引き起こす病気はある。医師の診断が不可欠だ。

人工関節置換術とは

変形した骨を関節で切除して、シリコンや金属などでできた人工関節に置き換える手術。特に第2関節が変形する「ブシャール結節」では、人工関節置換術が多く行われている。

「健活手帖」 2023-03-28 公開
解説
整形外科医師
高本 康史
NTT東日本関東病院整形外科医長。2004年、順天堂大学医学部卒。初期研修後、2006年、東京大学整形外科医局入局、2016年、米クライナートハンドセンター臨床留学を経て、2019年からNTT東日本関東病院勤務、2022年から現職。専門は手肘の変性疾患や外傷・整形外科。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。