処方薬 市販薬 薬乱用の危険性

薬乱用の危険性⑤~6種類以上の服用で薬の有害リスクは上がる

薬乱用の危険性⑤~6種類以上の服用で薬の有害リスクは上がる
病気・治療
文字サイズ

薬には副作用がつきものだが、主治医から処方された薬を勝手に止めると、治るべき病気が悪化する恐れがある。副作用に注意しながら、上手に薬を活用するにはどうすればよいのか。

「まずは、お薬手帳を活用して、わからないことや気になることがあれば、お薬手帳の薬局の薬剤師に相談するとよいでしょう」とアドバイスするのは、国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎博士。

いつも通う薬局の顔なじみの薬剤師には、ちょっとした症状も相談しやすいだろう。また、2016年から、一定の条件を満たした「健康サポート薬局」の制度もスタートした。薬以外に健康に関する相談もできる薬局である。日本薬剤師会のホームページ(日本薬剤師会で検索)の「かかりつけ薬剤師・薬局のこと」の項目に、目印となるロゴマークなどが記載されているので参考にしよう。

「複数のクリニックに通っていると、1つだけのかかりつけ薬局を持つのが難しいことがあります。健康サポート薬局を活用すれば、総合的な薬の相談も行いやすいと思います」

たとえば、内科のクリニックを受診して近くの薬局に行き、整形外科のクリニックでも近くの薬局へ。このように複数のクリニックに通院していると、それぞれの薬局の「お薬手帳」を持つことになり、内容が統一されないことがある。結果として、薬の重複で健康害を引き起こす「ポリファーマシー(多剤併用)」が、特に高齢者医療で問題になっている。日本老年医学会によれば、服用する薬が6種類以上になると薬による有害事象のリスクが上がる。

「厚生労働省の相談窓口『全国の医療安全支援センター』には、全国の相談窓口の一覧表が掲載されています。疑問点などは、ご自宅近くの相談窓口に問い合わせるのも一考でしょう」(※「全国の医療安全支援センター」で検索を)

かかりつけ医、かかりつけ薬局、公的な相談窓口も活用し、ポリファーマシーや薬の副作用を避ける心掛けが大切だ。

一方で、薬の種類が増えすぎないように、日頃からの健康管理も欠かせない。

「食生活の乱れや過度のストレスなどは、病気につながることを誰もがご存じでしょう。バランスのよい食生活と運動習慣は、健康を維持するためにぜひ取り組んでいただきたいと思います」

生活習慣病予防などで「運動しなさい」と主治医からいわれても、なかなか取り組めない人もいる。平日は駅から自宅までの速歩、休日はちょっと長めのウオーキングから始めてみてはどうか。

「運動した後に温浴をすると、エネルギー代謝の向上や体力回復の効率が高くなります。できれば30分くらい休んでからがお勧めです。水分補給をしっかり行った上で、温めのお湯で疲れをとってはいかがでしょうか」

一石博士お勧めの「薬との上手なつき合い方」(別項)を参考に。薬による副作用を防ごう。

一石博士による「薬との上手なつき合い方」

□薬局で入手できる「お薬手帳」で、処方された薬の内容を管理する(スマートフォンの人は、アプリ版も便利)
□「お薬手帳」は1冊にまとめる
□薬について不安があるときには、主治医やかかりつけ薬局の薬剤師に早めに相談する
□主治医や薬剤師に相談しづらい場合は、公的な「全国の医療安全支援センター」の窓口を活用
□薬の量を増やさないように、主治医の指導に従い食生活の見直しを行う
□市販薬やサプリメントを活用するときには、主治医やかかりつけの薬剤師に相談する
□薬の副作用や飲み合わせ・食べ合わせについても、事前に聞いておく

「健活手帖」 2023-01-21 公開
解説
医師、医学博士
一石 英一郎
国際未病ケア医学研究センター長。医学博士。1965年兵庫県神戸市生まれ。京都府立医科大学卒。京都府立医科大学免疫内科(補体研究・近藤元治元教授)で免疫学などを学び、北陸先端科技大学院大学教授、東北大学大学院医学研究科内科病態学客員教授、同大学先進医工学研究機構客員教授を経て現職。日本内科学会の指導医。米国がん学会の正会員でもある。厚労省温泉入浴指導員。『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)など著書多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。