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薬乱用の危険性①~認知機能低下を招く抗ヒスタミン薬

薬乱用の危険性①~認知機能低下を招く抗ヒスタミン薬
病気・治療
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健康を維持するには、食生活の見直しと同時に、病気の早期発見・早期治療が大切だ。近代医学の進展は目覚ましく、薬に頼れば「治らない」とかつていわれた病気も、克服可能になった。だが、薬に頼り過ぎると、知らぬ間に副作用に見舞われることがある。薬乱用の危険性について、国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎医学博士に聞いた。

「近頃、もの忘れが増えた」といったことはないだろうか。人の名前や、約束事をつい忘れてしまう。そうした症状は、加齢に伴い生じやすいため、「年のせい」ですまされがちである。頻繁にもの忘れが起こったときには、認知症といった病気を疑う人もいるだろう。ちょっと待ってほしい。薬の副作用でも起こりうるというのだ。

「痛みを軽減する疼痛治療薬、糖尿病治療薬などの生活習慣病の薬、うつ病などを治療する抗精神病薬など、一般的に処方されているたくさんの薬に、認知機能低下の副作用があります。添付文章にも記載されています。薬を長期間、無暗に服用することは、危険なのです」

こう指摘する一石英一郎博士は、医師として日々、数多くの患者を診ている。その中で、患者が知らずに、薬の副作用を抱える状況に危機感を募らせている。

「たとえば、花粉症で活用される抗ヒスタミン薬も、脳への影響で集中力の低下や、頭がボーッとするなどの副作用があります。自覚症状を感じにくく、薬の副作用とは気づかぬまま、仕事へのやる気の減退や、業績が落ちた人もいるのです」

抗ヒスタミン薬は、症状を引き起こすヒスタミンという物質を抑える作用がある。脳でその作用が働くと眠気、集中力の低下などの“鈍脳”につながるのだ。

「ドラッグストアでも購入できる抗ヒスタミン薬『フェキソフェナジン』や『ロラタジン』などは、脳への影響は少なく〝鈍脳〟予防になります。脳への影響を考えた薬選びが、とても重要といえるのです」

医療機関から処方される薬もさることながら、ドラッグストアで購入できる薬も、副作用を意識することが大切になる。これまで、薬局で受け取る薬を確認することなく服用し、ドラッグストアで購入した薬の添付文章を読まなかった人はご用心。それが、鈍脳や認知機能の低下さらには、薬剤性せん妄(別項参照)につながることがある。安易な服用は避けた方が無難なのである。

「もの忘れ以外にも、視力低下や目のかすみ、脱毛、骨粗しょう症なども薬の副作用にあります。老化だと思っていたら、実は薬の長期服用の影響ということも珍しい話ではありません」

薬を服用して新たな体調不良が出現したときには、主治医や薬剤師に早めに相談するようにしよう。

■薬剤性せん妄の症状

□会話にまとまりがなく、なんとなくボーッとしている
□夕方から夜にかけて、興奮して眠れなくなる
□時間や日付、自分のいる場所、家族の名前を言い間違う
□人が変わったように不機嫌でイライラする
□実在しない人や物が見えるような動作をする(幻視)

※厚生労働省の資料から

「健活手帖」 2023-01-17 公開
解説
医師、医学博士
一石 英一郎
国際未病ケア医学研究センター長。医学博士。1965年兵庫県神戸市生まれ。京都府立医科大学卒。京都府立医科大学免疫内科(補体研究・近藤元治元教授)で免疫学などを学び、北陸先端科技大学院大学教授、東北大学大学院医学研究科内科病態学客員教授、同大学先進医工学研究機構客員教授を経て現職。日本内科学会の指導医。米国がん学会の正会員でもある。厚労省温泉入浴指導員。『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)など著書多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。