年始から過食気味で、体重が3~4kgも増えたなどという人もいるだろう。それが高血圧に拍車をかける。
「肥満と高血圧の関係は深いのです。もともと高血圧の人が体重を増やすと、さらに高血圧を悪化させます」と、東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長は警鐘を鳴らす。
太ると血圧が上がりやすいのは、内臓脂肪に関係する。血圧を上昇させる物質(アンジオシノーゲン)が、内臓脂肪が増えることに連動し増加するからだ。肥満の人が体重を10キロ落とすと、上の血圧(収縮期血圧)が15mmHg程度下がるといわれている。90キロの人が80キロにすると、仮に上の血圧が150mmHgだった場合、135mmHgの家庭血圧測定での正常域に到達することが可能といえる。
「年をとると腎機能の低下で塩分排せつ能力が落ち、塩分が体内にたまりやすくなります。肥満した状態で老いると、塩分もたまりやすく、血圧を上昇させる物質の影響も受け、ダブルでよくないのです」
やはり、正月太りは解消するに越したことはない。とにかくやせることがなにより…といいたいが、実は痩せすぎるのもよくない。痩せすぎの人は太っている人よりも、死亡リスクが高くなるという疫学調査報告があるからだ=別項参照。
「肥満は健康害といわれながら、高齢者は少し太っていた方が死亡リスクが低いという『オベシティ・パラドックス(肥満の矛盾)』は、国内外で確認されています。逆に、高齢者は病気で痩せた場合も、ダイエットで痩せた場合も、死亡リスクが同様に上がるのです」
メタボ健診と呼ばれる『特定健康診査・特定保健指導』が2008年に始まり、内臓脂肪は目の敵にされ、痩せることが美徳のように考えられてきた。が、死亡リスクという観点では、やせ過ぎはよくないのだ。
「ちょっと太めを目指しましょう。身長(cm)から100を引いた数値が体重(kg)の理想です。ちょっと太めの状態を維持し、血圧も正常で生活習慣病がなければ、当然のことながら健康長寿につながります」
「ちょっと太め」は、身長170センチの場合、170―(マイナス)100=体重70キロ。ただし、これまで65キロだった人が、正月太りで70キロに体重が増えた場合は、高血圧や高血糖の引き金になりかねないので注意が必要だ。
「ちょっと太めがいいといっても、無理に太る必要はありません。肥満は血圧上昇、動脈硬化の促進、さらには心臓に悪影響を及ぼします。すでに肥満の人は徐々に解消し、ちょっと太めを目指していただきたいと思います」と原田副院長は語る。
日本人のBMIと死亡リスク
BMI(体格指数=体重kg÷身長m2乗)で「25」以上は肥満とされる。だが、男性16万人(1999年追跡)では、死亡リスクが「25~27未満」で最低だった。つまり、肥満領域の「ちょっと太め」で、死亡リスクが最も低かったのだ。「21」未満の痩せている方が、死亡リスクが高かった。女性の場合は、「23~25未満」が死亡リスクが最も低く、男性と同様に、痩せている人は死亡リスクが上がっていた。
※「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防提言に関する研究」より